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時代小説を一変させた『吉原御免状』 隆慶一郎が試みた徳川仮説の大胆不敵 松岡正剛 (3/5ページ)

2015.9.20 14:15

【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)

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 【KEY BOOK】「吉原御免状」(隆慶一郎著/新潮文庫、767円)

 こんなに表づらの歴史観をひっぱがして、かつ痛快無比だった時代小説はめったにない。吉原という舞台の奥深い秘密が妖しく綴られ、何も知らなかった誠一郎を取り巻く人物や集団がしだいに正体をあらわすにつれて、徳川権力構造を解凍する驚天動地の歴史観に出会っていけるのだ。そうか、江戸社会の本質はここにあったのかということが、どんな歴史書よりもヴィヴィッドに伝わってくる。作者は元テレビドラマの脚本家だったのである。

 【KEY BOOK】「かくれさと苦界行」(隆慶一郎著/新潮文庫、767円)

 その後の松永誠一郎を追った『吉原御免状』の続篇だが、吉原取り潰しに異様な情熱を傾注する老中酒井忠清との対立や、まるで背景から物語の糸を操っているかのような荒木又右衛門の存在、妖人服部京之介の呪法、さらにはおしゃぶやおふうの生きざまなど、興味が尽きないものになっている。なかでも裏柳生の噛ませ方が天下一品で、隆の作品が次々にテレビ化・マンガ化された理由がよくわかる。小説家は遠景がヘタクソだが、隆にはそれが描けるのだ。

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