【BOOKWARE】
赤坂真理(まり)の『東京プリズン』は、留学先のアメリカの高校での戦争責任をめぐるディベートで「天皇に責任がある」側に役割を振られたマリを主人公にした小説である。
16歳の少女が英語で東京裁判や日本国憲法を読み解いていくという、一種の暗号解読的な仕立てにもなっているのだが、天皇の戦争責任をめぐるタブーをみごとに浮き彫りにした。こんな方法で東京裁判を考えた者は、これまで一人もいなかった。
日本人は、一度は東京裁判に向き合わなければならないという気持ちを、どこかにもっている。ところが、この向き合いにはそうとうな負荷がかかる。ぼくは、小林正樹のドキュメンタリー『東京裁判』を6回は見ているが、見るたびに慟哭と憤懣と哀感と、そして責念のようなものが体に滲んできた。では、それらの正体が何なのかというと、それがなかなか掴めなかったのだ。