【KEY BOOK】「東京裁判」(アーノルド・C・ブラックマン著、日暮吉延訳/時事通信社、4104円、在庫なし)
アメリカのジャーナリストが東京裁判の法廷で発言した例は稀だった。ブラックマンはその一人。裁判をする側からの観察と取材にもとづいていて、参考になるところが少なくなかった。東京裁判は歴史的な「司法の試練」でもあった。本書からは連合国混成チームの自信と狼狽と熟慮とがよく見えてくる。日本側の裁判記なら、やはり清瀬一郎の『秘録東京裁判』に目を通したい。
【KEY BOOK】「落日燃ゆ」(城山三郎著/新潮文庫、767円)
東京裁判で絞首刑になった7人のA級戦犯のうちで、広田弘毅はただ一人の文官だった。だから広田の処刑には日本中が驚いたのだが、広田はいっさい抗弁をしなかった。その広田の無骨だが信念に満ちた生涯を、城山が過不足なく描いた。たいへん抑制的な文章なのだが、どの行間からも「無念」が染み出ている傑作だ。ただ広田が頭山満の玄洋社で培った日本ナショナリズムの国策感覚のようなものも、できればもっと描いてほしかった。