報道陣に公開されたスーパーカミオカンデ内部。たくさんの光電子増倍管が並ぶ=2006年4月7日、岐阜県飛騨市(山田哲司撮影)【拡大】
ノーベル物理学賞に輝いた東大宇宙線研究所の梶田隆章教授(56)は、素粒子ニュートリノに質量があることを証明し半世紀近くに及ぶ大きな謎を解き明かした。物質や宇宙の成り立ちに迫る新たな研究の扉を開く成果で、素粒子物理学の飛躍的な発展をもたらした。
大気ニュートリノを観測
ニュートリノは物質を構成する最小単位である素粒子の一つだが、他の粒子と違って謎だらけの存在だ。電子などと違って電気を帯びていないため、他の物質とほとんど反応せず、地球も通り抜けてしまう。観測でとらえるのは非常に困難で、「幽霊粒子」と呼ばれることもある。
1956年の発見以来、大きな謎だったのは質量の有無だ。ニュートリノは電子型、ミュー型、タウ型の3種類があり、飛行中に別のタイプに変身する不思議な性質がある。「振動現象」と呼ばれるもので、これが確認できればニュートリノに質量があることの証拠になる。
振動現象は1962年に名古屋大の坂田昌一(しょういち)博士らが理論的に存在を予言した。だが観測による裏付けはなく、素粒子物理学の基本法則である標準理論では、ニュートリノに質量はないとされてきた。もし質量が見つかれば、新たな物理学の誕生につながる重大な意味を持つ。