首都アブダビで世界記憶遺産の審議に臨むユネスコ国際諮問委員会の委員ら=2015年10月5日、アラブ首長国連邦(共同)【拡大】
中国の登録申請を受け、“防戦”に回った日本も傍観していたわけではない。「審査を行う国際諮問委員会メンバーに対し、ユネスコ加盟国は働きかけられない」(日本外務省筋)ことから政府はその動きをつまびらかにしていない。しかし、「政府は関係する分野の専門家などと協力し、委員側に日本の主張を伝えてきた」(与党議員)という。民間団体もパリのユネスコ事務局を訪問し、英文の反論文を提出している。
記憶遺産は、人類にとって歴史的価値のある貴重な文書の保護などを目的とする。中国が日本を貶(おとし)めるために利用する「南京大虐殺文書」の登録が本来の目的にそぐわないことは明らかだ。政府関係者は「申請も受理も理解できない」と述べ、記憶遺産事業の見直しもユネスコに働きかけるべきだとの考えを示した。
ユネスコの記憶遺産の審査では、登録追認決定のプロセスの不透明さも問題視されている。同じユネスコの世界遺産や無形文化遺産では登録の可否が公開の場で議論されるのに対し、記憶遺産は非公開の国際諮問委員会で審査され、ユネスコ事務局長が追認する仕組み。4~6日に開かれた委員会も非公開のため、日本側に反論する機会はなかった。