秋、枯葉の季節――。「枯葉」といえば、フランスの有名なシャンソンがある。戦後まもなく、歌手・俳優のイヴ・モンタンが歌って大ヒットしたが、実は作曲者はフランス人ではなかったといったら、驚かれるだろうか。
作曲したのは、ジョゼフ・コスマ。「天井桟敷の人々」などで知られる映画音楽の大家だが、実はハンガリー出身のユダヤ人だった。彼はナチスの迫害を逃れ移住したフランスで、名をなした。ちなみにモンタンもイタリアからの移民である。
考えてみれば、ピカソやゴッホ、ストラヴィンスキーやシャガール、ジェーン・バーキン、藤田嗣治(つぐはる)……。フランスの文化として親しまれている芸術作品は、その多くが外国からフランスにやってきた芸術家たちによって作られたのである。
「枯葉」を書いた当時、彼はまだフランス語があまりできなかったという。その状況で書いた曲が多くの聴衆に受け入れられたのだ。自分たちの感性に合うものであれば認めるのがフランス人の懐の広さなのだろう。