前兆をみればよい。北京は最近、元の国際通貨化をうたい文句に、国際的な元決済システム「CIPS」を構築した。ドル決済システムの代替で、米情報当局による監視から逃れたい国や勢力は元を決済通貨にできるようになった。党支配下の企業は、カネにものを言わせて、日本を排除して東南アジアのインフラを手中に収め、日米欧ではハイテク企業などを対象に「爆買い」攻勢をかけている。
元の膨張を防ぐ手段はただ一つ。元の為替制度と金融市場を他のSDR通貨と同程度に完全自由化させることだ。市場がカネの動きを決定づけるようになると、党による市場無視は資本の逃避や元の暴落を招くリスクが高くなる。ところが肝心のIMFは「改革が進むかどうか今後も監視していく」(ラガルド氏)と弱々しい。約束違反をしても、IMFに罰則規定はないのも同然で、国際通貨元という既成事実だけが先行する。
IMFへの貢ぎぶりでは世界一の日本は、もういい加減、口くらい出したらどうか。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)