それぞれの部には、3つの文化の「時間」を体現させた。「インドでは『輪廻(りんね)』を表現するため、円環構造を取り入れました。イスラムは現代と同じ時系列的な捉えかたを。アフリカでは、時間は断片的に描かれます」
経験しなければ描けない
本書の執筆にあたって、徹底した取材を試みた。バートンの足跡をたどってインドに暮らし、アフリカでは当時のバートンと同じ速度を体感するため、徒歩で1500キロを旅した。「作家には2種類います。経験しなくても描ける頭の作家と、経験しなければ描けない体の作家。私は後者で、調査に執着するタイプです。19世紀をどう描写するか。当時のテンポを感じるには、歩かなければならないと思いました。乾きで死にそうになる状況も体験しました。そのような状況を描くには、身体的に的確かが重要になる。強い経験を持つことで、強い文学を持てるのです」