【アートクルーズ】
「水」は私たちの体の大部分を占め、私たちに多くの恵みをもたらしてきた。とくに水(海)に囲まれている日本では、水が信仰を生み、言葉を育んで、国民の精神性までも形づくってきた。「水-神秘のかたち」(東京・サントリー美術館)は、それを強く感じさせる企画展だ。そして、水害の発生が目立つ昨今。水に対する“畏敬の念”を取り戻すときなのかもしれない。
「稲羽の素兎(いなばのしろうさぎ)」などが収録されている古事記をはじめ、「浦島太郎」や「桃太郎」などのおとぎ話の多くにも水が登場する。
神社や仏閣の由来や起こり(縁起)にも水が深く関わるものが多い。たとえば奈良・長谷寺の縁起もその一つ。奈良時代、近江(滋賀)の白蓮華谷(びゃくれんげだに)から洪水によって流されてきた霊木から高さ約10メートルの本尊を彫った。その後何度も火災に遭ったため、本尊はつくり直される。
浄化の力、信仰へ
平安時代の1094年、快慶によって復刻されたのが「十一面観音立像」で、その弟子、長快が8分の1で忠実に模刻した十一面観音立像(13世紀)が興福寺禅定院観音堂に伝来し、パラミタミュージアム(三重県)に収蔵されてきた。今回、館外で初めて展示されている。