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【佐藤優の地球を斬る】「わが闘争」にみる無理論の強さ (3/3ページ)

2016.1.16 16:00

1月8日、ヒトラーの著書「わが闘争」を再出版した「現代史研究所」の記者会見=2016年、ドイツ・バイエルン州ミュンヘン(共同)

1月8日、ヒトラーの著書「わが闘争」を再出版した「現代史研究所」の記者会見=2016年、ドイツ・バイエルン州ミュンヘン(共同)【拡大】

  • 作家、元外務省主任分析官の佐藤優(まさる)さん=2014年3月20日、東京都新宿区(大里直也撮影)

 情緒に訴える展開

 筆者は、『わが闘争』の復刊を認めなかったという姿勢は、却(かえ)って、「あの本には、もの凄いことが書かれているのだ」とヒトラーとナチズムを神秘化する役割を果たしてしまったので、間違いと思う。筆者が、『わが闘争』を日本語訳で初めて読んだのは、中学3年生のときだった。そのときは、意味がまったくわからなかった。その後、同志社大学神学部で、筆者はチェコ神学を研究したが、ナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体について調べる過程で、この本を再読した。そのときは、「無理論の強さ」に驚いた。ナチスの正式名称が、ドイツ国家社会主義労働者党であることに象徴されているが、ドイツ国家、社会主義、労働者という概念がそれぞれどのようなものであるか定義せず、これらすべての利益を体現するのがわれわれであるという情緒に訴えるキャンペーンが『わが闘争』の中では展開されている。

 日本人についても、自力で文化を創造することが出来ない二流の人種と貶(おとし)めている。理論的には支離滅裂な思想が、現実の政治において巨大な力を持つ実例として『わが闘争』を研究する必要がある。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS

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