≪あの日の刻印(宮城県東松島市・大槻陽平さん)≫
<23・3・11 14:40>
5年前のあの日の日時が印字された切符。
「家が流され、全てをなくした。震災前からの持ち物で残っているのはこの切符しかない」。中学2年の大槻陽平さん(14)は、勉強机の引き出しから取り出した。
宮城県東松島市のJR仙石線野蒜(のびる)駅。小学3年だった大槻さんは発券されたばかりの切符を手に列車に飛び乗った。石巻市にある絵画教室に通うためだ。
発券から6分後、大きな揺れに見舞われ、列車は緊急停車した。避難しようという声が上がったが、地元の人らしき男性が「津波が来る。ここにとどまるべきだ」と制止した。男性の予言は当たり、50分後、巨大津波が押し寄せた。列車はたまたま高台に止まり、難を逃れた。
切符は震災の数週間後に見つかった。財布の中に紛れ込んでいた。思い出すと震え出し、しばらく列車に乗れなかった。