常務の及川洋さん(42)は「津波の強大な力にも耐えたジーンズの丈夫さに自分たちの腕は確かだと思い、震災の約1カ月後には工場を再開させた」と当時を振り返る。
工場は高台にあったため、地域の避難所にもなった。その時の漁師たちとの会話からヒントを得て新商品も生まれた。今まで捨てられていたカジキマグロの吻(ふん)と呼ばれるくちばしのような部分を繊維化して配合したジーンズだ。
震災をきっかけに得た自信と縁を力に新たなものづくりに挑戦し続ける。
≪奇跡のハサミ(岩手県山田町・湊正美さん)
岩手県山田町で「カットインみなと」を経営する湊正美さん(67)は、震災で3階建ての自宅兼店舗の2階部分まで津波の被害を受けた。避難先から戻り、がれきの中から奇跡的にハサミやコームを見つけた。「泥まみれでゆがんでしまったものもありましたが、一丁ずつ洗い上げ、研ぎ直して大半が使えるようになりました」。津波に耐えたそのハサミで当時、避難先の豊間根保育園でカットのボランティアを行った。多くの人が「こんな時に髪を切ってくれるなんて思ってなかった」と喜んだ。