昨年3月、体験談を人前で話す依頼が届いた。気乗りしなかったが、意外にすんなり話せて、嘘のように震えから解放された。
≪語り部の「相棒」(宮城県石巻市・渋谷修治さん)≫
宮城県石巻市で被災した渋谷修治さん(58)。自宅が全壊したため、現在は市内の北上川沿いにある仮設住宅で妻と2人の娘とともに暮らす。
本業は建築士だが、シンガー・ソングライターとして精力的に活動。高校時代に北上川の河川敷で歌を作って以来、地元をテーマにした歌を歌い続ける。歌に欠かせないのが、約20年前に東京で買ったギターだ。倒壊した自宅から、奇跡的に無傷で見つかった。「もし津波がきていたら絶望的だった」と話す。
震災以後、全国から被災地を訪れる人に、地元の魅力を伝えるため、頻繁にコンサートに出演。震災前の風景を歌で伝える“語り部”としてこれからも歌い続ける。
≪津波を生き延びたデニム(宮城県気仙沼市・オイカワデニム)≫
大切に包まれた風呂敷を開くと、うっすらと砂のついたジーンズがでてきた。宮城県気仙沼市の縫製会社「オイカワデニム」では、海近くの倉庫に保管していたジーンズ約5000本が津波で流され、がれきの中から約40本が見つかった。ジーンズは泥まみれだったが糸のほつれはいっさいなかったという。