2つの顔を持つクルマ
ガバッとドアを開けると目に飛び込んでくるのは、前席に奢られたレカロシート。室内のワークス専用装備の白眉と言えるものだ。座ってみると…おお!完全に軽自動車のレベルを超えた座り心地。ナニコレ、ここだけ高級車じゃん!と変にテンションが上がる。肩から脇にかけてのサポートもばっちりで、こりゃ相当振り回しても全然イケるぞ、などと“危険”な予感すら浮かぶ。で、ドアをバチコンと閉めると…あれれ、なんだこの狭さは。私自身、かつて軽自動車オーナーだったこともあり、軽の室内の広さ(狭さ)加減については十分な経験(免疫?)があるつもりだが、それにしても狭い。レカロシートは座面、背もたれ、サイドサポートが肉厚なため、実際の空間以上に狭く感じるのだ。さらに、標準のシートよりも着座位置が少し高くなっており、頭上の空間も少ない(ボディ自体が背高スタイルでないことも一因)。その分、視点が高いので見晴らしはいいけれど、やはりスポーツモデル、幅方向の余裕は仕方ないとしても、着座位置だけは低くしてほしい。
ほかの軽と同様、運転席優先で左寄りにオフセットされた助手席はさらに狭い。陽気がよければ、窓を開けて左腕を外に出したくなる感じ。購入を検討中でまだ実車を見ていない方は、この狭さについてはあらかじめ覚悟が必要と思う。ほかの軽自動車からの乗り換えでも狭く感じるだろう。
装備は必要最小限だが、普通に乗る分には不足を感じないし、これで十分だと思う。ただ、インパネ中央の収納スペースはもうちょっとなんとかしてほしい。中途半端なサイズで3カ所。携帯やら財布やら、高速道路の通行券など小物を入れるためのスペースだと思うが、蓋がなく、角度も浅いので、特に上の2カ所は走行中にポロポロ落ちてしまう。落ちた物が床とペダルの間に入ったら、と思うと危なくて物を入れる気になれない。
後席に目を移すと、シートは一括可倒式のベンチ型で、座面が短い代わりに足元は広々している。座面も背もたれもフラットでクッションも薄いので、座り心地もサイドサポートも全く期待できないし、中長距離ドライブで座りつづけるのはしんどいと思う。しかし、短距離の買い物程度なら、不満が出ることはなく、むしろ乗り降りのしやすさや、荷物の積みやすさのほうが光るだろう。