かつて、プッシュスタートボタンの出始めのころに、キーを回して始動する方法が廃れていく予感がして、寂しくなった。シリンダーにキーを差し込み、グッと捻ってエンジンに火を入れる、あの儀式のような密かな愉しみがなくなったのは、確かに寂しいけれど、だからといって、クルマの本質的な楽しさまで変わってしまったわけではない。実際、GLCはどんな場面でも快適で、運転が楽しかったのだから。
音と画に酔う
室内装備で特筆すべきはオーディオとナビ。
試乗車には、ハイエンドオーディオメーカーのブルメスター社と共同開発したというサウンドシステムが装備されていたが、これが実にいい音で鳴ってくれる。試乗インプレでは、毎回必ずドライブ中に自分のスマホをUSBかBluetoothで接続して音楽を再生してみるのだが、残念ながら、車載オーディオについて特に書こうと思わせてくれるクルマはここまでなかった。と言って、私も別にオーディオマニアというわけではない。そんな私でも、「これは、段違いに良い」とわかるくらいにいい音、と言えばわかっていただけるだろうか。サラウンド機能があったので、試しにONにしてみると、ライブ音源では臨場感が一層高まり、運転しながら思わず頬が緩んだほどだ。パーキングエリアでは、仮眠しながら低めの音量でスムースジャズを流していると、音に包まれる感じがして、非常に心地よかった。長距離ドライブを一層楽しくしてくれる贅沢な装備と言える。
純正ナビは3Dグラフィックが美しい。広域表示にすると、箱根エリアのように、山あり谷ありで地面の起伏が激しく、湖もあり、少し離れて富士山も…というような場所では、空撮動画のように地形が緻密に描き込まれた3D画像が、ワインディングを駆け抜けるクルマの動きに呼応してグルングルンと回り、思わず見惚れそうになってしまった(もちろん、本当に見惚れたら崖下に落ちてしまうので泣く泣く我慢)。ナビの画像までリッチなのか、と半ば呆れるほどの力の入りようだ。