魚料理の伝統が長い日本と肉料理の伝統が長いドイツの違いが対照的に示されている事例だ。どちらの味覚が優秀か、という話ではない。
このように、それぞれの料理を複数の視点からみていくと、決まりきった価値観のバイアスを抜けられる。
もう一つ例をあげよう。大矢さんの店では月間1キロリットル以上の醤油を使用している。日本の同規模の店と比べると使用量は数倍。だからドイツ人は寿司に醤油をベチャベチャつけて味が分からない人たちだ、と上から目線になってはいけない。嗜好の相違を表しているに過ぎない、と彼は考える。
「和食が海を渡り数十年が経ちました。が、年数と普及レベルで考えたら日本に来たさまざまな異国の食文化と歴史的にさほど大差はないです。それでも欧州の方たちから、『日本では我々の国の人間が作るオリジナル◯◯料理でなく、日本人が作るなんちゃって◯◯料理ばかりだ』との驕った言葉を耳にすることはあまりありません」