デモの警戒から戻り、食堂で働くK君に「明日、西安を発(た)つので」と告げると、「スイカ食べていきなよ」。食堂を切り盛りする40代ぐらいの女性の老板(ラオバン、社長)と見送ってくれたが、反日デモのことなどまるで意に介していないような2人の笑顔が印象的だった。
正規留学先の北京でも、8月末から9月初旬にかけては、それほど反日の機運は高まっていなかった。北京首都国際空港から大学に向かうタクシーの車内では、ラジオから宇多田ヒカルの「First Love」が聞こえ、大学近くにオープンしたばかりの日本料理店では演歌が流れていた。
だが、9月11日、日本政府が尖閣諸島を国有化した前後から様相は一変した。
CCTV(中国国営中央テレビ)は連日、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国の領土だ」という特集を、それこそ一日中放映した。「まだやんのかい」。本当にため息が出た。
天気予報は各都市に加えて「釣魚島の明日の天気」を紹介し始め(誰が必要なのだ?)、大学近くの大型書店には「釣魚島コーナー」ができて関連書籍が平積みされた。なんだ、この準備の良さは…。