国民向けに「釣魚島は中国のものだ」と既成事実化した上で、「右翼化した日本が勝手に中国の領土を売買している」というイメージを喧伝(けんでん)し、日本側の主張など毛ほども紹介されることはない。
ああ、これが中国なのだと思った。
あがる「体感反日度」
「体感治安」という言葉があるが、この時期、北京の「体感反日度」が目に見えて悪化していくのが分かった。大学や街中で、人々が腹立たしげに「釣魚島」という言葉を口にするのを耳にした。
大学近くの中華料理店では、「日本人お断り」の張り紙が出された。「自分たちは日本と中国の友好のために来ているんだ、と店主に抗議して渋々外させましたよ」と、ある日本人の男子留学生が教えてくれた。
新規オープンした日本料理店の客足は、目に見えて減っていった。昼食を食べていたら、サラリーマン風の一行がメニューを見るなり「けっ。日本の料理なんか食えるかよ」と席を立ったこともあった。BGMは日本の音楽から中国のポップスに変わったが、結局、オープンから3カ月もたたないうちに店をたたんでしまった。