【ワシントン=柿内公輔】環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の大筋合意がまたしても先送りされ、旗振り役の米国の求心力低下は深刻だ。かたくなに譲歩を拒む一方で、国を挙げTPPを推進する機運を欠き、交渉の停滞を招いている。中間選挙が迫る中、オバマ政権を閉塞(へいそく)感が包む。
交渉を担う米通商代表部(USTR)の機能不全は目を覆うばかりだ。オバマ大統領が「国益を守るタフネゴシエーター(手ごわい交渉人)」と持ち上げるフロマン代表は「粗悪な協定なら結ばぬ方がまし」と各国との妥協を嫌い、本来期待された調整役も果たせていない。「自身に権限を集め、事務方が交渉の地ならしをこなせていない」(通商筋)との声が聞かれ、USTR内部の連携もしっくりしない。フロマン氏の「豪腕」があだになり交渉の硬直化を招いている。
もっと深刻なのは、国を挙げてTPP交渉を推進する「気迫」が各国に伝わらないことだ。オバマ大統領は政権当初こそ輸出倍増計画をぶち上げ、通商戦略を重視する姿勢を示したが、緩やかな景気回復に伴い、財政問題への対処など内向き志向を強めつつある。
オバマ政権が議会に採決を促す「大統領貿易促進権限(TPA)」法案も暗礁に乗り上げている。大統領が議会に通商協定の修正を許さず賛否だけを問えるTPAは、自由貿易を推進する野党共和党は協力的だが、皮肉にもオバマ氏の身内の与党民主党トップのリード上院院内総務が「議会軽視だ」と反対。各国はTPA抜きで協定を締結しても、米議会に骨抜きにされるのではと疑心暗鬼だ。
米国は来月から中間選挙の予備選が本格化し、いよいよ政治モードに突入する。オバマ政権も議会も産業界などの圧力に今まで以上に敏感になり、政治決断は一段と難しくなる。よほど性根を据えて各国の信頼を取り戻さねばTPPの「盟主」の座も危うく、手詰まり感も色濃い。