政府は5日、原子力発電所の安全性を向上させるため、原子炉や配管などの設備の故障を迅速に予測できる新システムを活用する方針を固めた。各設備の温度や圧力、振動などの「ビッグデータ(大量情報)」を総合的に解析することで、従来と比べて素早く正確に「危険」を予測できる。中国電力が島根原発で独自に行った実証実験を踏まえ、政府として全国の原発への導入を促す方針だ。原発事故の危険察知能力を向上させ、原発再稼働に向けた国内の機運を高める狙いがある。
これまで各原発では、原発建屋や原子炉、配管、ポンプ、発電機など施設ごとの定期点検を通じて温度や振動などの個別データを集め、施設ごとに故障を予測してきた。部分的なデータのみで分析するため、精度や予測スピードが十分ではなかった。
新しい「故障予兆監視システム」では、各設備に設置したセンサーから得られる大量の情報を総合的に分析し、事故の発生可能性を素早く予測する。
中国電力は平成24年に島根原発技術訓練用施設に同システムを試験的に導入した。疑似的にさまざまな設備の故障を発生させてシミュレーションを行ったところ、高い精度で故障の事前予測に成功したという。
政府は、そうした島根原発の成果を重視。同原発2号機で今月末から導入する同システムの運用結果も見極めた上で、政府として国内の全ての原発へのシステム整備を急ぐ方針。各電力会社に導入を促すため「国が補助金を出すことも視野に入れている」(政府関係者)という。
ただ、島根原発2号機を含む全ての原発は現在停止中のため、システムの本格運用は再稼働後になる見通しだ。
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■ビッグデータ ネット上や計器などで収集・蓄積された大量のデジタル情報。解析することで、傾向・見通しを分析・予測できる。商品開発や需要予測といったビジネス分野のほか、医療や防犯対策など幅広い分野での活用が期待され、政府が有効利用を検討している。