しかし、日銀が想定する「今年度後半に再上昇」という物価シナリオに対し、市場は懐疑的だ。民間エコノミストの予測では、物価上昇率は今夏に1%を下回り、平成27年度1%台前半にとどまるとの見方が多い。再上昇を受けて、27年度の上昇率が1・9%に達するとの日銀の予測とは大きな乖離がある。
労働需給の引き締まりが所得環境の改善を促し、内需の回復基調が続く-。これが日銀の強気の物価予測の前提だ。
だが、今春闘で賃上げを主導した大手自動車からは「物価上昇分を賃金に反映させたいが、競争環境が熾烈で慎重にならざるを得ない」との声が漏れる。
物価上昇に賃金の上昇が追いつかなければ、実質賃金の目減りが個人消費を下押しするリスクが高まる。実際、景気の先行きについて、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「物価上昇は続くだろうが、懸念は(不況下で物価が上がる)スタグフレーションの可能性があることだ」と指摘する。
企業が今後も賃上げの動きを継続・拡大できるかが景気の好循環を持続させ、日銀が目指す物価上昇率2%を達成するための課題になる。(万福博之)