内閣府も経済企画庁時代には見識と気骨のある官庁エコノミストが少なからずいた。そのOBで長老格の宍戸駿太郎筑波大学名誉教授は、内閣府および財務省が「狂った羅針盤を操作している」と嘆く。「羅針盤」とは財政出動によってどれだけ経済が成長するかという「乗数効果」や、経済成長によってどれだけ税収が増えるかという「弾性値」を指す。
「弾性値」とは、ゴム鞠(まり)を考えればよい。小さな力でも鞠は高く弾む。景気がよければ給与は上がるから消費など需要が伸びて、企業の売り上げや収益が増え、経済活動全般に好循環が生まれる。その結果として、所得税、法人税、それに消費税など税収の伸び率が経済成長率をかなり上回る。内閣府は真実を実は知っている。そのホームページを辛抱強く検索してみると、「経済成長と財政健全化に関する研究報告書」(23年10月)が見つかる。綿密な調査分析をもとに岩田一政日本経済研究センター理事長が座長となってとりまとめ、25~33年の税収弾性値を4・04と算出した。経済成長率の4倍以上の速度で税収が増えるのだ。にもかかわらず、財務省は弾性値を1~1・1とみなし、内閣府にはこの数値を採用させている。最近のプラス経済成長時の弾性値実績は3~5の範囲にあり、岩田報告書の線に沿うにもかかわらず、である。