日銀は30日に開く金融政策決定会合で、物価安定の目標とする消費者物価指数の上昇率2%について「平成28年度前半ごろ」とする従来の達成時期を、半年程度先送りする見通しとなったことが29日わかった。あわせて、大規模金融緩和の導入から2年半が過ぎたため、「2年程度で2%」という物価目標の表現も見直し、期間について幅を持たせた表現に変更する。
30日の会合では、半年ごとに公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)について、28年度の成長率1・5%、物価上昇率1・9%としてきた従来見通しをそれぞれ小幅に引き下げる。長引く原油安で物価の伸びが停滞したほか、中国の景気減速でアジア向け輸出も弱含んでいるためだ。
決定会合では物価上昇率2%の達成時期について「28年度後半ごろ」「28年度を中心とする期間」などの表現とする見通し。また「2年程度」とした表現も「できるだけ早く」など、年数を示さない形に修正する案が有力だ。
ただ、29年度まで先送りすることは避ける。29年4月に予定される消費税再増税により「個人消費が抑制され、増税分を除く物価上昇が弱まる」(幹部)懸念があるためだ。
このほか決定会合では、新興国経済の失速を受けて、企業が賃上げに慎重となる懸念についても議論する。「賃上げに伴う消費拡大を通じて、物価を押し上げる」という日銀のシナリオが崩れるリスクを踏まえ、追加緩和の必要性を議論する見通しだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は28日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、12月の利上げに含みを残した。日銀政策委員の間では「景気の先行きは底堅い」と追加緩和には否定的な意見も多い。