ニュースカテゴリ:企業
金融
進化するサイバーナビのAR技術 駐車場入り口の混み具合も分かる
更新
HUDを使えば、視線を落とさずに交通情報が得られる 風景に似せた地図をつくるのではなく、「AR(拡張現実)技術」で現実の風景そのものを使って道案内するパイオニアのカーナビゲーションシステム「カロッツェリア サイバーナビ」が、さらに進化した。クルマ同士を通信でつなぎ、位置情報などを共有する仕組みをいち早く取り入れ、今までより詳細な渋滞情報を運転者に提供できるようにした。
「車載カメラの映像をナビに生かすという発想は、当時としては画期的だった」。カーエレクトロニクス事業統括部カー市販事業部マルチメディア事業企画部企画1課の佐藤智彦氏は、サイバーナビを最初に市場投入した3年前をこう振り返る。
従来のカーナビは、位置情報を地図データに反映させるだけで、運転者がカーナビの画面情報を頭の中で現実の風景に置き換える作業が必要になる。「地図を読むのが苦手な人は、この工程がスムーズにできない傾向があった」(佐藤氏)。平成23年5月に発売した第1弾のサーバーナビは、AR技術の搭載でこの課題の解決を狙った。
AR方式のカーナビは、バックミラーの裏側に小型カメラを搭載。実際の風景の映像にさまざまな道路情報を瞬時に重ね合わせる。リアルタイムに動く映像と、道案内するナビ情報をピタリと重ね合わせて運転者に知らせるのは、並大抵の技術力ではうまくいかない。「約20年にわたるカーナビに関するパイオニアの技術の蓄積がなければ、こんなに早く実現しなかったかもしれない」と佐藤氏はいう。
もっと運転をらくにしたいとの開発チームの思いは、次に24年7月発売の第2弾製品での「HUD(ヘッドアップディスプレー)ユニット方式」の導入につながった。
HUDシステムは、運転に役立つ情報を、カーナビの画面ではなく、クルマのフロントガラスの前方に映し出し、目の前の本当の風景に重ねて表示する。これによってドライバーがナビに視線を移したり、遠近の焦点を合わせたりする負荷を軽減する。
映し出す情報は、走行状況に合わせた複数の選択肢がある。ドライバーモードは、目的地までのルート表示や車間距離表示、交差点情報などを分かりやすく表示。
ハイウェイモードは、高速道路の出口までの距離や通過予想時刻、車間距離、サービスエリア・パーキングエリアの施設内容などの情報を表示する。また、マップモードは、有料道路、国道などの道路を種別ごとに色分けした地図上に、自分の車が今どの位置にいるかが一目でわかる。
HUDを担当するカーエレクトロニクス事業統括部カー事業戦略部副参事の橋田雅也氏は「SF(サイエンスフィクション)映画の世界を現実にしたかった」と、サーバーナビの斬新な開発発想に胸を張る。
そして、第3弾となる最新のサイバーナビの進化がネットワーク技術との融合だ。カーナビユーザーなどの車載カメラが撮影した情報を、ドライバー間で共有する新しい情報提供サービス「スマートループ アイ」だ。これを使えば、人気スポットの駐車場の入り口付近や高速道路の車線ごとの渋滞状況など、今まで把握できなかったピンポイントの交通情報が確認できる。
AR、HUD、スマートループの3つの技術を搭載した新サイバーナビは今月初めに店頭に並んだ。オープン価格だが、15万円から34万円程度で販売されている。
進化を続け、市場をリードするサイバーナビだが、「次世代のカーナビに向けて新たな進化を生み出すには、サイバーナビが己を抜き去る必要がある」と佐藤氏らは力を込める。
バーチャル(仮想現実)の限界を超え、現実そのものという見やすさでドライブをサポートするARや、膨大な情報をドライブに活用するスマートループなど、業界の先頭を走るサイバーナビが次に何を目指すのか、業界は注目している。
先行きを語る開発陣の口数は多くないが、佐藤氏の次の言葉は、そのヒントとなる。「2次元のカーナビを3次元へと導いた今、次に見据えるのは時間軸を意識した4次元の世界だ」。(小島清利)