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金融
ネット生保…甘くなかった 成長軌道に「壁」 再浮上の糸口模索
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ネット生保2社の新契約件数 インターネット生命保険が早くも成長の壁に直面している。2008年の誕生から右肩上がりに新規契約件数を伸ばしてきたが、12年を境に漸減し始めた。ライフネット生命保険がスマートフォン(高機能携帯電話)経由の販売に注力する一方、アクサダイレクト生命保険はネット以外の販路拡大へ動くなど、先導する専業2社の成長シナリオに違いも出てきた。新規参入も相次ぎ競争が激化する中、再浮上の糸口をつかめるのか。
「価格競争力があれば伸びると思っていたが、そんなに甘くなかった」。アクサダイレクト生命の斎藤英明社長はつぶやく。
対面販売が一般的な生保の約半額の価格帯やシンプルな商品性を売りに高成長を続けてきたネット生保だが、12年度の新規契約は同社が前期比19.1%減、ライフネット生命が0.1%減と開業以来初めて前年を下回った。
ライフネット生命は13年度上期(4~9月期)も前年同期比12.8%減と減少に歯止めがかかっていない。ネットの契約数を開示していない競合も「新規の落ちはどこも一緒」(オリックス生命保険)だ。
伸びが鈍化した理由について、新しい商品に早い段階で飛びつく「アーリーアダプター」の取り込みが一巡したとの見方が強い。であれば、今後はネットや保険にそれほど詳しくない顧客層にも裾野を広げる新たなステップが必要になってくる。
「ニーズ顕在型の自動車保険とは違い、潜在型の生保をネットだけでやるのはしんどくなった」。斎藤アクサダイレクト生命社長はネット専業ながら“脱ネット”ともとれる発言をする。実際、同社は13年末までに複数の銀行と提携し、銀行の窓口で保険を販売する方針だ。
申し込み手続きはあくまでもネット上だが、店頭で説明したり、ネット銀行と接続したりとさまざまなアプローチを組み合わせる。
「分かりにくい商品であればあるほど、第三者のアドバイスや比較が必要」と斎藤社長。今後も銀行を含めた代理店と積極的に組む方針だ。
オリックス生命も顧客から対面説明の要望があれば、代理店に紹介する仕組みを導入する。
一方、ライフネット生命の出口治明会長は「他の販路の前にすることがたくさんある」と反論する。まだアーリーアダプターでさえ、深掘りできていないとの考えがあるからだ。ネット専業2社の12年の生保全体の保有契約におけるシェアはわずか0.17%で、ネット生保全体でも1%に満たず、なお成長余地は大きいとみる。
まず挙げるのがスマホへの対応だ。スマホで申し込みが可能なネット生保は8社中、ライフネット生命と楽天生命保険の2社しかない。ライフネット生命では「サイト改良をひたすら進めている」(出口会長)とし、小さな画面でもストレスなく契約までたどりつける工夫を凝らす考えだ。
コールセンターも強化し、「顧客が決めきれないなら、丁寧に背中を押してあげた方が(新販路を構築するより)はるかに早い」と強調する。
ただ、各社の新規契約の伸びが鈍化した後もネット生保への新規参入が後を絶たない。12年に2社、13年には1社が加わり、14年にはSBIホールディングスも再参入する。
特に楽天生命は約8500万人のグループ顧客基盤が「脅威」と競合首脳は警戒する。楽天カードのサイトで商品紹介を始めるなど、連携を深めている。踊り場を抜け出して、再び急成長軌道を描けるか。各社の工夫とアイデアが問われている。(万福博之)