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日露首脳の信頼深化 追いつけない外務省
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日露の外務・防衛担当閣僚会合「2プラス2」が11月2日、東京で行われた。この会合が行われるのは初めてで、日露の戦略的提携関係が強化されつつあることを示すものだ。本件に関し、露国営ラジオ「ロシアの声」が7日にロシア科学アカデミー極東研究所のパブリャチェンコ研究員の見方について報じている。
<パブリャチェンコ氏は「2プラス2」の形式が日本にとって重要であると指摘している。安倍首相は外交国防政策を活発化させているが、軍国主義・覇権主義復活という批判をかわすため、積極的平和外交と銘打っている。新しい形式での対話をスタートさせることによって、日本の外交には新しい展開が生まれており、ロシアもそれに一定の評価を下している。
「ラブロフ外相は次のような慎重な発言をしています。ロシアは日本から積極的平和外交について説明を受け、それを理解した、と述べているのです。それ以上ではありません。しかし日本にとっては第一の同盟国である米国および軍事同盟を結んでいる豪州との間で行っている『2プラス2』という形は意味をもつものです。今日、それをロシアとも行っているのです。これは地域における主要問題が日中関係であることを考慮すれば、かなり重要な点です」
発表された声明には「中国の脅威」という言葉は見当たらない。そのうえ、ラブロフ外相は今回の会談が第三国に向けられたものではないことをはっきりとさせている。ただ、交渉を報道した日本の各メディアにはロシアにとっても中国が脅威であるとの指摘がなされた。日本側は地域の安全保障および北朝鮮の核問題やテロリズム、麻薬密輸、海賊などにおける国際安全保障におけるロシアと日本の立場を近付けるため、と今回の交渉の目的を説明している>(http://japanese.ruvr.ru/2013_11_07/124045554/)
「ロシアの声」は国営放送なのでロシア政府の方針に反する論評は行わない。ロシア外務省は、日露の「2プラス2」が対中牽制(けんせい)を目的とするものではないと強調しているが、本音では、日露提携が対中カードの1枚であることをパブリャチェンコ氏は示唆している。
同時に日露提携の天井について、ロシアの声は<ロシアには中国との戦略パートナーシップが存在する。ロシアと日本にはそのような土台は存在していない。ただ、ロシア側はアジア太平洋地域における相互理解と信頼醸成に向けた文脈のなかで、露日の新しい交渉形式に意味を見出している。
一方でパブリャチェンコ氏は、日本による領有権主張自体が、ロシアとの信頼関係構築の可能性を否定している、と指摘している>と報じた。
要するに北方領土問題を棚上げして、アジア太平洋諸国との信頼関係を強化するシステムを作ることがロシアの国益に合致するとパブリャチェンコ氏は述べているのだ。このような状況で、日本外務省は、北方領土交渉についてどのような戦略を持っているのだろうか。
1日の日露外相会談において、来年1月もしくは2月に外務次官級協議を行うことが合意された。安倍首相とプーチン大統領の首脳会談が既に3度行われ、首脳間の信頼関係が急速に深まっている。このテンポに事務方が追いつけていない。
1日のブリーフィングで外務省の宇山秀樹ロシア課長は、「頻度の話は、年2回と決めたわけではない。今回、正直、なかなか腰の重かったロシア外務省に何とか次回の次官級協議の日程を決めさせたということだ。1月末から2月初めということで決まったので、それに向けてわれわれとしては準備していくということにつきる」と述べた。日本外務省の実力ではロシア外務省の遅延戦術を阻止できないということだ。最前線でロシアと交渉する外務省の課長がこのレベルであることを実に情けなく思う。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS)