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社会
【勿忘草】偽表示
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全国のレストランなどで、食材の偽装表示が相次いでいる。世界に認められた美食の国としては、もちろんしっかりした表示をするに超したことはない。だが、味の違いがあまり分からない消費者としては、フルーツジュースと生搾りジュースの違いを見分ける自信はない。
「日本海の荒波にもまれて脂がのった」はずのブリが、実は養殖だったなどというニュースもあった。養殖ものなら、脂は脂でも違う脂が乗っていそうに思うのは私だけだろうか。消費者に「おいしそう」と思わせるには、さまざまな言葉のテクニックがあるのだな、と私の興味は日本語表現の豊かさの方に向いてしまう。
ホテルや百貨店の役員らが連日頭を下げているが、このままだと「おふくろの味」とうたっているのに、調理場にはおじさんしかいなかった、なんていう事態でも頭を下げかねない。
以前、あるフードジャーナリストがこんなことを言っていた。「東京は世界一の食の都。激しい競争に、開店から5年続く店は半分もない」
東京だけではない。地方でふらりと入った店にもハズレはほとんどない。それも、和食だけでなく世界中の料理がおいしいのだ。美食の都で知られるフランス・リヨンでもどこの店もおいしかったが、料理は全てフレンチだった。東京五輪を前に、世界中の料理がおいしいのは誇るべき日本の文化だ。
同時に、400円しない牛丼も弁当もおいしいことにも驚く。相次ぐ偽表示は、激しい飲食業界の競争に加え、安くておいしい料理に慣れすぎた消費者の側にも原因があるように思えてならない。
私には「生搾りジュース」と「100%ジュース」の違いを感じる舌はない。だが、例えば100円で出されたジュースに「生搾り」は期待しない。違いが分からない消費者は値段で判断するしかないのだ。
だからこそ私は、偽表示そのものより、偽表示された料理がいくらで提供されていたかが気になる。安い食材を高い食材と偽表示した上、高い料金を取られていたら、悪質だ。何より、見抜けなかった自分の舌が…悔しいではないか。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS)