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強引な韓国への強い不満 遅刻で見せつけたプーチン大統領

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強引な韓国への強い不満 遅刻で見せつけたプーチン大統領

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ロシアのプーチン大統領  【佐藤優の地球を斬る】

 ロシアのプーチン大統領が11月13日、韓国を公式訪問し、ソウルの青瓦台(大統領府)で朴槿恵大統領と会談した。会談終了後、両首脳は合同記者会見を行い、共同声明を発表した。

 <声明には「(韓露)双方は最近、歴史に逆行する言動が障害となり、北東アジア地域の強い協力潜在力が実現しないことに関し、共同の憂慮を表明した」との異例の文言が盛り込まれた。名指しこそ避けてはいるものの、「歴史に逆行する言動」をしているというのは日本を指していることは明白で、背景には韓国側の強い意向があったことがうかがえる>(11月14日付『産経新聞』)

 少年選手と話し込み

 プーチン大統領は、これまで日本との関係改善に意欲的だった。それが今回の訪韓で、韓国と連携して「反日統一戦線」の一翼を担いようになったと受け止めると事柄の本質を捉え損ねる。

 プーチン大統領は、韓国の態度に満足していない。14日、韓国の『中央日報日本語版』(電子版)が興味深い情報を伝えた。

 <プーチン大統領が「遅刻」、首脳署名式と記者会見ずれこむ

 この日1日の日程で訪韓したプーチン大統領は、朴大統領との首脳会談を控え30分遅く会談会場の青瓦台(チョンワデ、大統領府)本館に現れた。当初プーチン大統領は午後1時に到着し午後1時5分から朴大統領と単独首脳会談をする予定だったが、実際の会談は午後1時30分ごろに始まった。1時間ほど予定された首脳会談も2時間近くに増え午後3時30分まで続いた。

 そのため両国首脳協定署名式、共同記者会見などの予定がずれこんだ。プーチン大統領の“遅刻”は首脳会談前の日程のためだった。プーチン大統領はソウル市内のホテルで開かれた韓ロビジネスダイアログ開幕式に出席して演説したのに続き、ロシア伝統格闘技のサンボ関係者らとも会った。その影響で午後3時15分に予定された首脳昼食会が1時間30分遅れの午後4時45分に開かれた>(http://japanese.joins.com/article/269/178269.html?servcode=A00&sectcode=A00

 外交常識に照らして、公式首脳会談に30分近く遅れるのは、極めて非礼な行為だ。事実韓国では、プーチン大統領は非礼であるとの非難が起きている。サンボの少年選手たちと話し込んでいるうちに遅れたというのが公式の説明だが、額面通りに受けとることはできない。

 声明で「歴史」言及

 プーチン大統領の補佐官は日程管理を厳格に行っている。首脳会談は外交日程で最優先事項になる。プーチン大統領は外交上のプロトコール(儀典)を熟知している。また、元インテリジェンス・オフィサーであり、意味のない行動や発言をしない。

 共同声明文は首脳会談の前に事務方で詰めて合意する。この過程で韓露間にかなり大きな見解の相違があり、最終的にロシアが譲歩することになったが、プーチン大統領はそのことに対して不満を持っているということを、首脳会談への大幅遅刻という形で可視化したのである。

 この不満は日本へのメッセージをめぐってでないかというのが筆者の見立てだ。今回の韓露共同声明における「(韓露)双方は最近、歴史に逆行する言動が障害となり、北東アジア地域の強い協力潜在力が実現しないことに関し、共同の憂慮を表明した」という文言は、韓国の執拗(しつよう)な要請に応じたものだ。

 ロシアとしては共同声明が合意に至らずに決裂し、韓国との関係が極度に悪化することを避けるためにこの文言を入れることにしたのだと筆者は推定している。そして、「私は合意文書作成過程を含め、今回の韓国の対応には強い不満を持っている」という認識を可視化させたのであろう。

 韓国の強引な姿勢がプーチン大統領の神経を逆なでしたと筆者は見ている。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS

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