ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
【逍遥の児】ローカル線で行く城下町・大多喜
更新
晩秋。よく晴れた日。房総半島奥地の城下町、大多喜(おおたき)町に向かった。JR京葉線と外房線を乗り継ぎ、大原駅で下車。ローカル線のいすみ鉄道に乗り換える。切符を求めようとすると、売店のおばさんが声をかけてくる。
「どちらまで行かれるのですか」
「大多喜です」
「往復するのなら、こちらがお得ですよ」
1日フリー乗車券。1000円。なんだが、旅の始まりからしてローカル線ならではのふれあいを感じる。
いすみ鉄道の前身は旧国鉄木原線。現在は大原駅-上総中野駅間約27キロを運行する。
黄色い列車に乗り込んだ。1両編成。青い制服、制帽のベテラン運転士と、中年の見習い運転士の2人組。乗客は8人だった。
いすみ鉄道は、独特の運転士養成コースを考案した。運転士志望者を公募して訓練する。条件は訓練費用700万円を自己負担。かなりの出費だが、鉄道少年だったころの夢をかなえたいと応募者は多いという。この見習い運転士もその1人なのだろうか。がんばれ。がんばれ。無言でそっと応援する。
列車が大多喜駅に到着した。大多喜は、徳川四天王の1人、本多忠勝(1548~1610年)が築いた城下町だ。なぜ、房総半島の奥地に-との疑問がわく。当時、房総半島の南端、安房(あわ)には戦国大名の生き残り、里見氏が勢力を張っていた。徳川家康は里見氏への備えとして信頼厚い本多忠勝を配したという。
丘の上に白亜の城。実は明治初期、廃城となった。1975(昭和50)年に天守が再建された。登っていく。本丸の下に川が流れている。御禁止(おとめ)川。城主は領民にこの川での漁を禁じた。鯉が大きく育つ。城主は「むらさき鯉」をヒノキのたらいに入れ、生きたまま、将軍に献上したという。本丸到着。見渡す。紅葉が美しい。さわやかな風。
昼食は食事処「番所」と決めていた。イノシシ料理を出す。店主の勧めでイノシシ肉のカレーを注文した。
「イノシシは近在で捕れたものです。おいしいですよ」
濃厚な味わい。うまい。さて食後は城下町をまわってみるか。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)