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【奥多摩だより】水の線分(山梨県丹波山村)

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【奥多摩だより】水の線分(山梨県丹波山村)

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水の線分=2013年12月25日、山梨県北都留郡丹波山村(野村成次撮影)  三寒四温という言葉がある。寒い日が3日続き、暖かい日が4日続くという。もともとは朝鮮半島や中国北東部のことわざだ。日本では、それが典型的に表れることは少なく、最近では春先の季節の移ろいに使われることが多い。しかし、3日、4日とはっきりしなくとも、寒い日と暖かい日は交互にやってくる。先日も、上着が邪魔な春の陽気だった翌日に雪が降って、今冬一番の冷え込みだ。寒暖の差は老齢の体にこたえるが、気力と若い連中の悪口雑言への反発で、何とか持ちこたえている。

 東京都の結氷する滝として人気の檜原村(ひのはらむら)の払沢(ほっさわ)の滝も、先月(1月)中旬に6割ほど凍ったが下旬には溶けてしまった。そこがまた凍ってきている。冬場に結氷を狙うときは、その状況を調べておかなくては、はるばる出かけてガックリとなるのだ。

 奥多摩湖を越えて、山梨県丹波山村(たばやまむら)に入ったところに洞門がある。落石防止のコンクリートの覆いで、片側は外が見えて朝の光が差し込んでいる。上から水がしみ出て寒い日はつららとなるが、暖かくなればポツリポツリと水滴。その日は気温が上がってきた。落ちた水滴は飛び跳ねる。ピッチャンと弾け散り、逆光の中で小さな爆発だ。今日はこれだとばかり道路脇に座り込んで、落ちる瞬間を狙った。いつ落ちるか分からない、じっと忍耐あるのみ。これも悪口に耐えてきた成果である。

 通常のシャッタースピードでは、おもしろくない。スローシャッターは、その水滴の飛散を長めの線に表現してくれた。ところが撮影に粘りすぎてバスに乗り遅れ、次の便まで2時間待ち。仕方なく延々と歩いたら、足腰にかなりこたえた。若い連中の笑い声が聞こえてくる…。(野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。

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