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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】最低賃金保証が目標(6-4)

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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】最低賃金保証が目標(6-4)

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通所施設「地域作業所_hana(ハナ)」代表の筒井啓介さん=2014年2月12日午後、東京都千代田区(宮崎裕士撮影)  天童荒太さん(以下天童) 今ではNP(「NEWSED PROJECT(ニューズドプロジェクト、以下NP)」)以外の仕事も来るようになったそうですが、作業所としての成長は感じていますか?

 筒井啓介さん(以下筒井) 正直、全然満足していない。最低賃金(※8)を全員に払うという目標を明確にしていて。千葉県だと780円ぐらいかな。僕らは今、時給が昨年(2013年)度実績で250円。フルタイムできても3万円弱。毎日一生懸命働いている以上、障害があるからって安くていいわけじゃない。基本的人権の部分から考えても、最低賃金は払うべき。自分の稼いだお金で生活をするということを大切にしたい。それには3倍がんばらなければならないけれど、技術というより、効率性の問題。どういうふうに仕事をしてもらうか。

 例えば、アクセサリーの台紙、全盲の人が作っているんです。何ができるかをご本人とお話しして、目が見えない分、手の感覚が敏感だということが分かった。補助具を使って、千枚通しで穴をあける。しかも誤差がない。すごい。

 ハナ(通所施設「地域作業所_hana(ハナ)」、以下ハナ)のマンパワーをどう生かすか。単にやって、っていうだけじゃなく、人によって教え方も違うし、道具も変わる。

 天童 全盲の人への仕事なんて普通はあきらめちゃう。補助具を作ってまで割り振ろうというのは、やはりハナの姿勢はすごい。

 筒井 単純にそうしないと回らない。納期はいつでもいいなんて仕事はないですから。いかに短時間で正確に納められるか。終わらなかったら、結局支援員が徹夜してやらざるを得ない。それはイヤじゃないですか。うちの定員は20人ですが、1日20人は必ず作業できる労働力がいるというのは、すごく大きい。

 天童 作業所に来る方の最終目的は一般企業への就労だそうですが、働く現場を実際に拝見して思ったのは、ハナが最終の就職先になっていけばいいんじゃないか、ということでした。

 筒井 そうですね。うちは精神障害がある方が多いんですけど、コンビニのバイトに普通に受かる。でも、1、2週間はよくても、そのうち人間関係とかがネックになって、体調悪くなってしまう方が結構いる。せっかくがんばっても、戻ってしまう。それを食い止めたい。

 天童 企業に障害ある人を雇えという流れがある。でも、会社勤めって、人間関係ですよ。気の合う人がいる所だと仕事がはかどる。なら、むしろ作業所とか、分かってくれている人の所を最終的な雇用先にした方がよっぽどいい。NPとハナがやられていることは、一つの先端モデルなんじゃないかな。とはいえ、全く課題がないわけでもないのでは。(構成・文:塩塚夢、撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS

 ■てんどう・あらた 1960年、愛媛県生まれ。86年『白の家族』で第13回野性時代新人文学賞受賞、93年『孤独の歌声』が第6回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『家族狩り』で第9回山本周五郎賞受賞、2000年『永遠の仔』で第53回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞、09年『悼む人』で第140回直木賞、愛媛県文化・スポーツ賞、13年『歓喜の仔』で第67回毎日出版文化賞受賞。

 ■あおやま・ゆうじ 1980年、川崎市出身。帝京大学卒業後、自動車ディーラーに。退社後、1年半のバックパッカー生活を経て2006年に「ケンエレファント」入社。11年、社内事業だった『NEWSED PROJECT』をNPO法人化。商品の企画から発注、販路開拓までを総合プロデュース。現在、副理事を務める。NPのほか、廃材を利用した企業向けワークショップの企画なども行っている。

 ■つつい・けいすけ 1980年、横浜市出身。法政大学在学中に木更津市の町おこしプロジェクトに関わり木更津市に移住。2000年、大学2年生でNPO支援を行う企業「ネットビジネス」を設立。06年にNPO法人「コミュニティワークス」を立ち上げ、「精神障害者共同作業所hana」を開設。10年に障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業所の認定を受け、「地域作業所 hana」に移行。現在、代表を務める。

 【キーワード】

 ■(※8)最低賃金 特定(産業別)最低賃金と、産業や職種に関係なく適用される地域別最低賃金がある。地域別は各都道府県ごとに定められ千葉県は777円(2013年度)。

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