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科学
原発避難計画 122市町村の35%が年度内策定できず
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原発事故を想定した避難訓練でスクリーニング検査を受ける住民=2013年1月26日、鳥取県米子市(谷下秀洋撮影) 原発から約30キロ圏の自治体が作成する原発事故の避難計画について、対象自治体(福島県地域を除く)122市町村のうち、約35%の43自治体が今年度内に策定できないことが3月4日、産経新聞社の調査で分かった。一方、再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査が先行している九州電力玄海(佐賀県)、関西電力大飯(福井県)など6原発の周辺自治体では、すべて年度内の策定が見込まれており、再稼働に向けた準備は整いつつある。
年度内に策定できない地域は宮城、新潟、茨城、静岡の全地域で、青森でも一部が未策定。年度内の策定は計79自治体となり、策定率は約65%になる。昨年(2013年)末に原子力規制庁が調べた際は策定済みは53自治体にとどまっていた。
避難計画を含む防災計画の策定は、原子力災害対策特別措置法で義務付けられている。計画策定はこれまで8~10キロ圏に限られていたが、東京電力福島第1原発事故で30キロ圏に拡大、対象自治体も3倍となった。
具体的な避難計画の策定は、原子力災害対策指針で必要性が明記されているが、策定は難航している。特に、県境を越えて避難しなければならない自治体も多く、受け入れ体制や避難経路の調整が進まないことが大きな要因だ。
静岡県によると、原発事故だけでなく南海トラフ巨大地震なども想定しなければならず、県内だけで被災者は受け入れられないが、他県から避難受け入れの了解が得られないという。
一方で、原発の審査は大飯、玄海のほか、先行して申請した北海道電力泊▽関西電力高浜(福井県)▽四国電力伊方(愛媛県)▽九州電力川内(せんだい、鹿児島県)-の計6原発が進んでいる。この地域に該当する自治体は年度内の策定率が100%になる。(原子力取材班/SANKEI EXPRESS)
≪経路、避難先確保…実効性どこまで≫
3年前の東京電力福島第1原発事故を契機に、各自治体では避難計画の策定に取り組んでいるが、約35%の自治体で作業が難航していることが産経新聞社の調査でわかった。計画策定は自治体の責務だが、現場では計画の対応方針策定が遅れた国への不満が噴出。実効性の高い避難計画をいかにすべきか、苦悩が浮かぶ。
対象自治体のすべてで策定が済んでいない東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県。柏崎市の担当者は「国の指針はあるが、どこまで具体的に書き込むべきか。例えばバスで避難させるにしても運転手の被曝(ひばく)をどう防ぐかなど、考えたらきりがない」と嘆く。出雲崎町も「杓子(しゃくし)定規の計画ならいつでもできる。住民が納得するような本番できちんと使えるものをつくる方が大事だ」と強調する。
避難経路の確保はどの自治体でも大きな課題だ。逃げるための道路は限られ、何万台もの車が殺到すれば渋滞で動かなくなる。東北電力東通原発を抱える青森県むつ市の担当者は「対象地域には約2万5000人の住民がいるが、避難道路は1本だけ。渋滞なくどのように移動させるかが大変だ」と悩みを打ち明ける。
避難計画がまだできていない茨城県では、日本原子力発電東海第2原発の30キロ圏内に約100万人の昼間人口を持つ。県は「原発から5キロ圏の住民が圏外に出るだけで15時間もかかる」といい、早期の避難に解決策が見つからない。
関西電力大飯、高浜など原発が多く立地する福井県は、すべての避難先が確保できたのが今年2月。対象となる県民は約34万人で、施設数は約1030カ所という膨大な数に上る。奈良県まで避難先を加えた。
中部電力浜岡原発がある静岡県は南海トラフ巨大地震による複合災害が予想される。
ある自治体は「県外の避難先を確保しなければならないが、国や県が動かないと、市町村レベルではお手上げだ」と国への不満をにじませる。
被災した東北電力女川原発がある宮城県は7市町が未策定だ。担当者は「避難場所の確保、避難住民の意向把握が難しい。住民をばらばらに避難させてはコミュニティーの崩壊につながる」。策定を終えた九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市では、「車に近所の住民を同乗させて避難し、事故を起こしたら保険は下りるのか」といった問題まで検討課題として出たという。(SANKEI EXPRESS)