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中国全人代 道険しい習指導部 課題山積 成長と改革の両立に苦慮
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中国・首都北京市 中国の李克強首相(58)は3月5日開幕した全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で、経済成長と構造改革を両立させる姿勢をアピールした。だが、成長力に陰りが見える中、大気汚染や金融リスクなど問題は積み上がるばかり。道は険しく、習近平指導部は難しい経済運営を迫られている。
「改革は今年の政府活動の最重要任務だ」。こう力説した李首相は約2時間にわたった政府活動報告で、77回も「改革」という言葉を連呼した。
李首相が報告で「行く手には多くの困難や問題がある」と認めた通り、中国は急成長のひずみで生じた課題が山積みだ。
環境規制が追い付かず、微小粒子状物質「PM2.5」などによる大気汚染が深刻化。野放図な投資は製造業の生産過剰を招いた。住宅価格高騰で大都市の庶民は都心から遠い郊外の家しか買えなくなった。かたや、一部都市ではマンションが増え過ぎ、住む人がいないゴーストタウンが出現している。
「(不動産市場の)投機目的の需要を抑制する」「鉄鋼の生産能力を2700万トン削減する」。李首相は報告で具体的な目標も挙げながら、構造改革を進める方針を説明した。いずれも成長の下押し要因となる取り組みをあえて進める形だ。
上海の金融関係者の間では昨年(2013年)から「中国政府は14年の成長目標を13年より引き下げ、7.0%に設定して、改革優先の姿勢を示すのではないか」との観測が広がっていた。大量の失業者を出しながらも国有企業改革などを断行した朱鎔基元首相に李首相を重ねる見方も出ていた。
だが政府は結局、成長目標は引き下げず、3年連続で7.5%に設定。社会の安定のためにも「雇用の確保」(李首相)に迫られたからだ。
「失業者が大量に出ている」。鉄鋼の街として知られる河北省唐山市で、鉄鋼業界関係者は不安そうだ。唐山市では大気汚染対策と生産能力過剰の解消という構造改革のため、工場の生産停止や閉鎖が相次ぎ、さびれた雰囲気も漂う。
正規の銀行ルート以外の取引である「影の銀行(シャドーバンキング)」をめぐっては、山西省などで高利回りの金融商品がデフォルト(債務不履行)寸前に陥り、投資家が販売窓口の銀行に押し掛ける騒ぎに発展。こうした動きが拡大し、社会不安につながれば改革どころではなくなる。
世界では新興国経済の先行きに懸念が広がっており、各国は中国経済の安定と成長維持を求めている。「目標を7.0%に引き下げれば、中国は成長維持に自信がないというメッセージが世界に伝わることになる」(北京の金融筋)との見方も強まっていた。
李首相は改革への取り組みは「背水の陣」だと述べる一方、「中国経済という大きな船が安定した航海を続けられるようにしなければならない」と強調。国内外の経済への影響を見極めながら、すり足で進むような改革を進める構えを見せた。(共同/SANKEI EXPRESS)