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経済
【消費増税 5%→8%】価格転嫁「できない」 中小は大企業の9倍
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消費税増税前の最後の3連休の駆け込み需要で大型家具チェーンは多くの買い物客で賑わった。配送依頼の品物を運ぶ従業員=2014年3月23日午後、東京都練馬区のニトリ成増店(小野淳一撮影) 《消費税増税 企業アンケート》
産経新聞社は4月の消費税増税を前に、金融を除く主要企業106社や中小・ベンチャー企業97社に対するアンケートを実施した。この中で、増税分の価格転嫁について「まったく転嫁できない」と答えた中小・ベンチャー企業の割合が、主要企業の9倍に達した。増税による景気回復の鈍化を予測する声が多いことも分かった。増税前の駆け込み需要の手応えも振るわず、企業業績の改善が消費を押し上げるとのシナリオにも暗雲が漂っている。
東証1部上場会社を中心とした主要企業へのアンケートでは、価格転嫁について、60%の企業が「すべて転嫁する」と回答。「まったくできない」と答えた企業は2%だった。「監督官庁の処理方針に基づく」(電鉄)「消費税の趣旨に鑑(かんが)みて、すべて転嫁することが適切」(エネルギー)など政府方針に従うとの回答が多数を占めた。
転嫁は「一部」にとどまると答えた企業は全体の10%。「一部の商品は、仕入れ構造改革などで値上げを極力抑える」(小売り)など、販売量の維持を目的に、自助努力を模索する声も聞かれた。
一方、主に従業員300人以下の中小・ベンチャー企業の調査では、価格転嫁が「まったくできない」と答えた企業は18%。「一部転嫁」(25%)を加えると、すべてを転嫁できない企業が4割超に上った。「顧客との付き合いを続けるため」(製造業)「孫請けなので一部しか転嫁できない」(サービス業)などの声が聞かれた。
増税が景気回復に与える影響を主要企業に聞いたところ、50%が「回復の流れを緩やかにする」と回答。増税前の駆け込み需要については、23%が「ほとんどなかった」と答えた。
アンケートはそれぞれ、3月中旬に実施した。
《強気の大手 7割超が「影響ない」》
主要企業アンケートでは、4月の消費税増税による自社の業績への影響について、「まったくない」と「軽微」を合わせて7割超となるなど、自信を深める大手企業の姿が浮き彫りとなった。「過去の消費税増税などの際も、業績への影響は限定的だった」(電鉄)というのが楽観論の背景にあるようだ。ただ一部の企業からは「消費マインドの落ち込み」や「駆け込み需要の反動減」を懸念する声も聞かれ、根強い警戒心もうかがわせた。
消費税増税が会社の業績に与える影響については、59%の企業が「軽微」と回答した。「一定期間は駆け込み需要の反動を見込んでいるが、中長期的に見れば影響はない」(電機)というのがその理由だ。また、「(影響は)大きいと想定されるが、新商品や新サービスのタイムリーな投入で乗り切る」(小売り)と、企業努力で対応できるとの声もあった。
「全くない」とした企業は15%。理由では、「需要は引き続き堅調」(建設)などのほかには、「成長戦略の具体化で景気の回復基調は継続する」(エネルギー)など、足元の状況や政策期待から楽観的にみている企業が多いようだ。
14%の企業が「大きいが一時的」と回答。「好調な高額商品を中心に4~6月に落ち込む可能性」(電機)を指摘する声や「消費者の買い控えが想定され、他社との販売競争が激化する」(食品)と警戒する回答もみられた。
消費税増税が企業業績に与える影響がいつまで継続するかとの質問に対しては、「4~6月期」と「7~9月期」を合わせると6割を超えた。増税から半年以内に、影響は収束するとの見方が多い。
もっとも、「グローバルな経済動向や政府の景気刺激策の効果次第で変わってくる」(小売り)との指摘もあった。
また、増税の影響が「来年以降も続く」と回答した企業も5%あった。楽観論が大勢を占めながらも、一部の企業は影響の長期化を懸念しているようだ。(SANKEI EXPRESS)