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2014~15年秋冬東京コレクション キラキラ 輝く瞳に包まれて
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≪ネ・ネット≫__ジャケットとショートパンツは、いがらしゆみこさんが描いた少女漫画の瞳がモチーフでポップな印象。東京のサブカルチャーの今を映すかのよう=2014年3月22日(提供写真) 東京のトレンドを世界へと発信する2014~15年秋冬東京コレクションが3月末に催され、東京・渋谷の「渋谷ヒカリエ」などで各ブランドが新作を披露した。
和の伝統的なスタイルをモダンに昇華させたものから、原宿や渋谷などのストリートカルチャーを色濃く映したものまで、バラエティー豊かな今回の東コレから、ファッションジャーナリストの近藤陽子さんに、旬のキーワードをチョイスして、傾向を解説してもらった。
スクリーンに大映しになった少女マンガの瞳が、キラキラと星を瞬かせるように来場者にウインク。その瞬きから飛び出したかのように登場したモデルたちが着ていたのは、少女マンガのイラストをあしらったジャケットやスカート。乙女心をくすぐるユーモラスなショーを見せた「ネ・ネット」のテーマは、「キラキラ twinkle twinkle」。ショー前半では「キャンディ・キャンディ」の漫画家、いがらしゆみこさんがネ・ネットのために書き下ろした「瞳」や少女のモチーフ。後半は漫画家タナカカツキさんのイラストを配したウエアの数々で、純粋なものが持つ輝きを表現した。
こうしたユニークでちょっと不思議な世界観のショーは、東コレならではの楽しみの一つだ。「ミントデザインズ」は、スナップボタンやベルト、安全ピンなど実用的な洋服の留め具を、コートやワンピースの織り柄や刺繍(ししゅう)の模様にしたり、実物を髪飾りにしてみたり。一方、メンズブランド「キディル」もキッチュなアニマル柄をモチーフにしていた。
≪無限の可能性とともに パリへ旅立つ決意≫
「英国調」が今の東京の気分、なのだろうか。東コレでは、デザインさまざま、いろんなチェック柄が見られた。
「ビューティフル ピープル」は、ステージの中央に大きなユニオンジャックのイルミネーションが据えられ、披露されたのはまさに60~70年代の英国調の装い。デザイナーの熊切秀典氏らがビートルズの人気曲を演奏する中、色もパターンもさまざまなチェックが見られたが、中でも、ゆったりしたシルエットのパンツに、オーソドックスなグリーンのチェックのジャケットを重ねたスタイルが印象に残った。
「ヤストシ エズミ」は、品のよいシックな色合いのチェックに、レザー素材の切り替えをアクセントにした、ひと手間加えたボックスシルエットのワンピースを提案。シンプルで直線的なボックスシルエットは、60年代を象徴するデザイン。また、ベーシックでありながら前衛的な要素も取り入れて提案する「アンベル」は、チェックの地模様のうえに、クラシカルなビクトリア調の柄を織り込んだコートやパンツなどを見せた。
色使いでは、ウインターパステル系の淡くきれいな色使いが目立った。「スレトシス」や「ビューティフル ピープル」のパステルブルーやピンク。「エー ディグリー ファーレンハイト」は、晴天と雨天の間でゆらぎながら色を変える曇天の空模様から着想を得て、不安定にうつろう自然の色を、同型の変形トレンチコートの色展開で表現した。
こうした傾向とは別に、今回の東コレで最も私の印象に残ったのは、“無限(INFINITY)”をテーマに発表した「クリスチャン ダダ」だった。ロック、パンク、ブリティッシュといったキーワードを軸に、改めて原点に振り返った今回。そこには今後は発表の場としてパリを目指す一人の日本人の「錦を飾る」といった強い意思が感じられた。
思えば約1年前、シンガポールの合同展示会「BLUEPRINT」に「クリスチャン ダダ」の服が並んでいたことを思い出す。他にもいくつか日本ブランドの出展はあったものの、現地メディアをはじめ、インドネシア版『ハーパースバザー』や『ナイロン』誌のエディターもこぞって「森川マサノリのデザインが一番クール」と語っていた。
それから気づけばシンガポール企業の傘下に入り、ブランド価値向上を視野にパリに乗り込むことになったわけだが、歴史あるファッションの都でその牙城を崩すことはそう簡単なことではない。でもだからこそ、同じ日本人として心から応援したいし、このブランドなら現在どこかくすぶる日本のファッションシーンに一石を投じてくれるのでは、と期待したくなる。何よりも、デザイン以上にデザイナーのマインドに私自身が勇気づけられた。グローバルに夢が広がるこのブランドの未来予想図がエキサイティングになることは確かだ。(文:ファッションジャーナリスト 近藤陽子/SANKEI EXPRESS)