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【にほんのものづくり物語】和流
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国産天然由来成分にこだわったMADE_IN_JAPANの化粧品「warew」(NOSIGNER提供) ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
2020年の東京オリンピック開催に向かい、日本の伝統・文化についての意識が高まっている昨今。私たちの国に受け継がれてきた有形、無形の「もの」「こと」を生きた形としてつないでいこうと働きかけている方々がいます。それが現れ始めたのは3・11。東北をそして日本を元気にするために、日本人のアイデンティティーを見つめ直すことが原動力になったからではないでしょうか。
今回は「日本」の持つ力をデザインを通して社会につなぐ、クリエイターの太刀川英輔さんを横浜に訪ねました。
現在、伝統工芸の分野では職人の高齢化が進んでおり、全国の生産現場において、次世代への技術継承に関して共通の問題を抱えています。伝統技術が衰退していくことは、日本のアイデンティティーが失われていくことに等しい。デザインの力で、伝統工芸へのニーズをできる限り作ろうと実践されているのは、ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を理念に活動するクリエイター、太刀川さん。自ら率いるデザインファームNOSIGNERの名には「見えないものをデザインする人」という意味が込められています。
太刀川さんが学生時代に学んだのは建築でしたが、より広い概念で「ものを結んでいく」仕事がしたいと、デザインの世界へと進みました。初期のクライアントだった、徳島の木工協同組合から依頼を受けデザインした伝統的な弁当箱(遊山箱)は、グッドデザイン賞を受賞し、海外の展示会にも招待を受けるほどの高い評価を受けましたが、売り上げという意味では思ったような効果が出ませんでした。この経験が、見えないものを含めたデザインの重要性に気づいたきっかけだったそうです。
デザインには「作り手」と「使い手」の橋渡し役という社会的な使命があります。個のデザインがうまくできても、全体としてのプロジェクトがうまくいくとはかぎらない。太刀川さんは、全体を俯瞰(ふかん)する視点に立つことで、既存のジャンルにとらわれることなく、さまざまなフィールドへと活躍の場を広げてきました。
最近手掛けた仕事の一つ、国産天然由来成分にこだわったMADE IN JAPANの化粧品「warew」。かねて興味を持っていたオーガニック素材。自然に恵まれた日本に古くから伝わる生薬の力や、湯治という習慣を生かした処方に大きな可能性を感じたそうです。
スキンケアを、心を整え、肌を美しく導く「作法」と表現し、日本女性の立ち姿からインスピレーションを得たパッケージは、赤い帯に手を添えて扱うと、日々のスキンケアを気品ある所作で行うことができます。商品を発表した展示会のブースは、まるで神社のような厳かさで他を圧倒しました。鳥居は自分が変わるための「ハレ(非日常)とケ(日常)」を分けるゲート(門)、そのイメージを化粧という行為になぞらえています。日本の家紋に歴史や思想があるように、そこには「美しさを導くように」という祈りが込められています。あるがままに調和する日本の美意識や、文化の源にある哲学を、時代の潮流に合わせて表現することがデザイナーとしての課題なのだといいます。
今大切なのは、日本の伝統、文化を単に識(し)ることだけではなく、伝えられてきた日本の心を、絶やすことなく、私たちの暮らしの中に息づかせることではないでしょうか。「もの」と「人」との新たな関係性を築くデザインの力に思いをはせ、クールジャパンの未来にも大きな期待を持ちたいと思います。(SANKEI EXPRESS)
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町1の17の1 パークビュー横浜701。TEL/FAX:045・663・8802。www.nosigner.com/
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