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人生の「一歩の重さ」感じながら 舞台「殺風景」 八乙女光さんインタビュー

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人生の「一歩の重さ」感じながら 舞台「殺風景」 八乙女光さんインタビュー

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 どぶ川の臭い。台所にこびりつく炒め油の臭い。実際に福岡県であった親子共謀による殺人・死体遺棄事件をモチーフにした舞台「殺風景」(作・演出、赤堀雅秋)には、人が生きて垂れ流す、ありとあらゆる生臭さが描かれている。

 最初は違和感

 狂気の殺人に走った一家の次男・稔を演じるのが、「Hey!Say!JUMP」の八乙女光(やおとめ・ひかる、23)。開幕の1週間前、都内の稽古場を訪れると、甘い表情を封印し、張り詰めた面持ちの八乙女の姿があった。

 稔はかつて炭鉱で栄えた九州・大牟田で育った。元炭坑夫で今は小さな暴力団の組長・菊池国男(西岡徳馬)と、炭坑夫相手の売春スナックで働いていた母マリ(荻野目慶子)、兄(大倉孝二)の家族4人、電話代の支払いにも困る暮らし。一方、隣家で闇金業を営む節子(キムラ緑子)は羽振りがよく、どことなく国男一家を見下している。

 2004年の夏の日の午後、息子同士のいざこざで菊池家に節子が乗り込む。低姿勢と愛想笑いで節子を見送ったあとマリは、「あん女(節子)殺そうと思う」とつぶやく。「あん女って、(幼なじみの)茂一ん母ちゃん?」と稔。これといったきっかけもなく始まる無計画な連続殺人。淡々としたセリフのやりとりが、日常と地続きにある殺意の空恐ろしさを浮き彫りにする。

 「最初はなんでそうなるのか、全然理解できず、違和感しかなかった」と八乙女。なぜ隣人を殺すのか。なぜ稔は「俺がやる」と拳銃を手に取るのか…。稔と、炭坑夫だった40年前の国男を演じる八乙女は、実際の事件の記録や、炭鉱の盛衰に関する本などの資料をあたり、国男一家の暮らしに深く想像をめぐらせた。すると「体から役がにじみ出てくるようになってきた」という。

 よみがえる金八時代

 「何かの拍子に心の糸が切れたら、ぶわっと泣いてしまうような、そんな境遇を生きる人たち。命がけで炭鉱で働いたのにこのありさまという国男のやるせなさや怒り。稔も、本心では『俺は殺(や)りたくない』って叫びたいと思う。踏み違えたら崩壊する2人の人生の“一歩の重さ”を感じながら演じています」

 毎日稽古に夢中だ。赤堀の脚本では、何げない日常の振る舞いを演じるのが特に難しいと感じているが「稽古場では西岡さんや大倉さんからアドバイスをもらったり、荻野目さんも立ち話しながら一緒に考えてくださったり。毎日が勉強で新しく吸収することだらけ」と充実している。

 稽古が終わって帰宅後、稔役を復習すると、ある役の記憶が重なって思い出されるという。10年前、ドラマ「3年B組金八先生」第7シリーズで演じたドラッグに手を染めた中学生、丸山しゅう役のことだ。しゅうも稔も八乙女の実年齢に近く、心に闇を抱える。「もっともっと心の奥を見せてくれ。それを俺が全部抱えて、知らない人に全部伝えるから。金八の時、そうやって、しゅうと向き合ってたあの感覚が、久々によみがえっているんです」

 たとえそれが悪臭漂うものだとしても。稔や国男が生きた証しはきっと届ける。八乙女の決意を感じた。(津川綾子/SANKEI EXPRESS

 ■やおとめ・ひかる 1990年12月2日生まれ。宮城県出身。2007年、「Hey!Say!JUMP」のメンバーとして「Ultra Music Power」でCDデビュー。ドラマ作品「3年B組金八先生」(04年)、「美男ですね」(11年)など。舞台は「滝沢演舞城」(06年)や「DREAM BOYS」(12年)など多数出演。

 【ガイド】

 5月3~25日 Bunkamuraシアターコクーン。劇場(電)03・3477・3244。5月30日~6月2日 シアターBRAVA!。キョードーインフォメーション (電)06・7732・8888

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