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米、サイバー攻撃で中国軍将校5人起訴 「政府の後ろ盾」国益侵食を許さず
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米連邦大陪審は5月19日、サイバー攻撃で米企業にスパイ行為を行ったとして、中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊「61398部隊」の将校5人を起訴した。東芝傘下の原発大手ウェスチングハウス(WH)など5社と労働組合1つから、機密情報を奪った疑いがある。
司法省によると、米国がサイバー攻撃を通じたスパイ行為で、外国の当局者を起訴するのは初めて。中国は強く反発しており、サイバー問題をめぐる米中対立が激化しそうだ。
被害に遭ったのは、WHや鉄鋼大手USスチール、アルミ大手アルコアなど。5人は2008~12年にかけ、サイバー攻撃を行ったとされる。
WHのケースでは、将校の一人が10年、WHが中国で建設中の最新型原子炉「AP1000」4基に関する技術や設計の機密情報を盗んだという。
USスチールのケースでは、将校が社員に電子メールを送ってコンピューターをウイルス感染させ、情報を奪っていたとされる。
これに対し、中国外務省の秦剛報道官は19日夜、問題のサイバー攻撃は「米国の捏造だ」と抗議し、起訴の撤回を求めた。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)
≪「政府の後ろ盾」国益侵食を許さず≫
オバマ米政権は、中国人民解放軍のサイバー工作員5人を起訴し、ネット空間での中国のスパイ活動に徹底的に対抗していく姿勢を明確に打ち出した。
米政府は、サイバー攻撃で米企業にスパイ行為を行ったとして将校5人が起訴された中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊「61398部隊」の上海の拠点の動向を数年にわたり監視してきたとされる。バラク・オバマ米大統領(52)が昨年(2013年)6月の中国の習近平国家主席(60)との首脳会談で、初めてサイバー攻撃への警告を発して以来、米政府は中国に繰り返し対応を迫る一方、起訴に向け着々と捜査を進めてきた。
連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官(53)は19日、「さらに多くの犠牲者がいる。あらゆる法的手段を使い、サイバー・スパイに対抗する」との声明を司法省を通じて発表した。ホワイトハウスの当局者は今年3月、昨年(2013年)1年間で3000社以上の米国企業がハッキングの被害に遭ったとしており、今回の事案は「氷山の一角」にすぎないというわけだ。
ジェイ・カーニー米大統領報道官(48)は19日の記者会見で「政府が後ろ盾となってサイバー空間を使い、政府や民間のシステムに脅威を与えるスパイ行為は容認しない」と述べた。中国のスパイ行為が現在も続いているとの見方も明らかにした。
エリック・ホルダー司法長官(63)も19日の記者会見で「今回の起訴は、上海のような遠隔地からのネットによる経済スパイだとしても、政府当局者の犯罪行為は暴露され、米国の法廷で起訴されることを明確にした」と述べ、中国政府を強く牽制(けんせい)した。
FBIは起訴した5人についてそれぞれ「指名手配」のポスターを作製し、ホームページに掲載した。司法省も、企業に偽装メールを送って情報を奪うなどといった5人の生々しい「手口」を公表して、中国に警告を発した。
ただ、5人は中国にいるとみられ、身柄の確保は困難だ。
それでも起訴に踏み切ったのは、安全保障、経済の両面で米国の国益が中国の活動で著しく侵食されているとみているからだ。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)
≪中国は激しく反発、さらなる対抗措置も≫
米司法省が中国人民解放軍の将校5人を起訴したことを受け、中国政府は5月19日、北京の米大使館を通じて抗議するなど激しく反発した。起訴の撤回を求める中国当局は、米国にさらなる対抗措置を取る可能性もある。
中国国営新華社通信などによると、中国の鄭沢光外務次官補は、軍人たちが起訴された直後の19日夜、米国のマックス・ボーカス駐中国大使(72)を中国外務省に呼び「米国側は事実を捏造し、両国関係を著しく損ねた。中国は強い憤慨と断固たる反対を表明する」と抗議した。外務省の秦剛報道官も19日夜の談話で、米中両政府がサイバー攻撃問題について協議する作業部会の活動中止を表明した。秦報道官は「対話と協力を通じてサイバー攻撃問題を解決することに関し、米国は誠意に欠ける」と批判した。
また、中国国防省の耿雁生報道官は19日、「中国政府と軍はいかなるサイバーテロにも参加したことがない。中国こそ米国によるサイバー攻撃の被害者だ」との声明を発表した。
中国のネット上でもこの問題に大きな関心が寄せられ、「対抗して米軍人を起訴すべきだ」「米国債を売却せよ」などの強硬な意見が多数書き込まれた。
オバマ米大統領は4月の日韓や東南アジアの歴訪を通じてアジア重視戦略を明確にし、中国の軍や保守派から猛反発を招いた。今回の起訴で、中国の保守派はさらに刺激された形で、米中関係の修復は一層難しくなりそうだ。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)