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パリの街角 騒がす報道写真 ジャーナリスト集団「世界の出来事、熟考を」

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パリの街角 騒がす報道写真 ジャーナリスト集団「世界の出来事、熟考を」

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 世界中で起こっているさまざまな事件や出来事を身近に感じてもらおうと、パリを拠点に活動するフォトジャーナリスト集団「ディスターブ」が、街角に自分たちがニュース現場の最前線で撮影した巨大写真を張り出す活動を始め、注目を集めている。大手メディアがそれほど積極的に報じない事柄を写真を使って多くの人々に知らしめると同時に“世界で本当に起こっている出来事”について熟考を促し、フォトジャーナリズムに興味を持ってもらうのが狙いという。

 雑誌はときどき使う程度

 「(メジャーな)雑誌はエジプトやグルジアやアフガニスタンでの出来事を伝えることにほとんど興味がない。ときどき写真を1、2枚使う程度だ。だから私は自分が撮影した写真を使い、私が見た出来事を多くの人々に見せ、それを伝えたかったんだ」

 ディスターブを結成したフランス人フォトジャーナリスト、ピエール・テルジマン氏(34)は、米誌タイム(電子版)に結成の動機をこう説明した。ディスターブは「かき乱す」「騒がす」といった意味だ。

 テルジマン氏はイスラエルの日刊紙ハーレツのカメラマンとして活躍した後、2007年にパリに戻り、フランスの著名なフォトエージェンシー「ガンマ」に所属。08年のロシア・グルジア紛争をはじめ、「アラブの春」の発端となった11年1月のチュニジア政変やエジプト、リビアの政権崩壊などを取材した。

 そんなテルジマン氏が、初めて訪れた中央アフリカ共和国からパリに戻った今年2月、ディスターブの構想を仲間のフォトジャーナリストたちに打ち明けたところ、次々と賛同者が広がり、活動が始まった。彼らがゲリラ的に街に繰り出し、壁を埋め尽くすように張り出す巨大写真の多くは、紛争地帯で途方に暮れる少年たちや、強力な機関銃で武装する男性のシルエットといった、平和な西欧社会では想像が及ばない過酷な現実と向き合う人々の姿だ。

 「実際の世界で何が起こっているかについて、人々の認識を高めることが目的なんだ。有名になろうなんて思っていないし、公共スペースの品位をおとしめてもいない。写真が物語っているのは中央アフリカやウクライナ、エジプトで起こっている本当の出来事なんだ」

 テルジマン氏は自分たちの活動をこう評した。

 全欧州、米上陸も…

 この活動の意義を知らしめる出来事もあった。仲間の一人である女性フォトジャーナリスト、カミーユ・ルパージュさんが、中央アフリカ共和国で取材中、命を落としたのだ。ちょうど彼女の写真を街に張り出す直前の悲劇だった。ディスターブのメンバーは「(この活動によって)われわれも人々も、彼女を忘れることはないだろう」と話している。

 ディスターブの活動について、いまのところパリ市役所などに規制する動きはないという。フランスの著名な戦場カメラマン、ギョーム・ハーバート氏はタイム誌に「フォトジャーナリズムはもともと戦闘的な行為。われわれが直面する世界の現実を問いかけるものだ」と好意的に評価した。

 活動は順調だが、課題もある。写真1枚につきプリント料などが40ドル(約4000円)かかる。その費用はメンバーの自己負担なので、今後は活動資金を集める基金を創設したいという。欧州全域や米のニューヨークやサンフランシスコにも活動範囲を広げたいと話すテルジマン氏は「街角こそ究極のソーシャル・ネットワークなんだ」と胸を張っている。(SANKEI EXPRESS

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