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【アラスカの大地から】(20) 過酷な環境へ驚くべき順応

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

【アラスカの大地から】(20) 過酷な環境へ驚くべき順応

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巣穴から姿を現したホッキョクジリス。大きな個体は体長50cm、体重は1.5kgにも達する=2013年7月4日、米アラスカ州(松本紀生さん撮影)  撮影にはできるだけ最新、高機能の服装で臨む。それはオシャレをするなどという感覚ではなく、強風や豪雨、低気温といった自然の脅威から自らを守る手段である。

 そんなカタログから飛び出してきたような格好をしていると安心できる半面、ひどく自分が情けなく感じることもある。

 強風に身を任せ大空を悠々と舞うイヌワシ。横殴りの雨に打たれながら大地を闊歩(かっぽ)するヒグマ。そんな生き物たちの姿を見るにつけ、今この場所で最ももろい生き物は自分だよなあ、と自責にも似た思いにとらわれるのだ。この防水ジャケットがなければ、この防寒着がなければ、果たして自分は何日生きながらえることができるのだろうか-。

 己の身ひとつでこの過酷な環境を生き抜く野生動物たち。その順応性には、極地ならではの驚くべき進化が集約されている。

 ≪体温を氷点下に 究極の省エネ≫

 円筒形のボディーと器用に動く前足。愛らしさを演出する体形が、実はこの動物の生存に直結している。

 ホッキョクジリスは地中に暮らすリスだ。その体形と鋭い爪を駆使し、全身をドリルと化して地中に巣穴を作る。外敵や風雪から隔離された空間には、雑多な植物や昆虫、小動物などが食料として保管されている。

 特筆すべきはその冬眠方法だ。

 約8カ月間にもおよぶ冬眠中、彼らは体温を通常の37度からなんとマイナス3度にまで下げるという。氷点下である。そのままでは凍死してしまうので、数週間ごとに目覚め、蓄えた脂肪を使い体温を35度前後にまで回復させるらしいのだ。まさに生死をかけた究極の省エネサバイバルである。

 春の大地を駆けまわるその愛嬌(あいきょう)あふれる姿からはおよそ想像できない壮絶な営み。どんな高価な製品よりもはるかに進化した、自然界の最新ボディーである。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退後、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。2004年夏、マッキンリー山登頂。著書に「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー「アラスカ・フォトライブ」を開催。matsumotonorio.com

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