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【プロ野球】大谷翔平 162キロ記録 夢を乗せて 超特急投手に
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162キロ。夢を乗せた球速は今後、どこまで伸びるのだろう=2014年7月19日、兵庫県西宮市・甲子園球場(共同) 野球をめぐる数字で最もロマンをかき立てられるのは、ピッチャーの投げる球速だろう。今年のオールスター第2戦で、日本ハムの大谷翔平(20)が日本球界最速の162キロを記録した。しかも2度も。
1イニング限定の登板で、観客が何を自分に求めているか、知っていた。「スピードだけしっかり出しに行った」。阪神の鳥谷に投じた初球でいきなり161キロ。そして2球目に162キロ。巨人時代のクルーンが2008年6月、ソフトバンク戦で記録した162キロに並んだ。
この日に投じた23球中21球が直球。このうちなんと12球が160キロ台で、巨人の阿部に対する初球も162キロを記録した。
20歳の若武者。登板のない日は3番に座ることもある二刀流だが、これほどの速球の持ち主は世界でも希少だ。一流打者への道はできれば忘れ、超一流の速球投手を目指してほしい。必ずもっと、速くなる。
試合前には、先発で投げ合う同期生、阪神の藤浪とキャッチボールを始め、スタンドを沸かせた。観客を喜ばせるために2人で決めたのだという。そうしたショーマンシップをさりげなく、さわやかに行えるところがいい。遠投を終えると互いに歩み寄ってグラブでタッチし、試合に臨んだ。
このとき大谷は、甲子園球場のスピードガンは右打者の外角寄りが高く表示されると、藤浪から本拠地の秘密も伝授されていたのだという。
160キロ台連発の大谷に、藤浪は「ちょっと異次元」と話したが、自身もこの日、自己最速の156キロを出した。十分に速い。おそらく、もっと速くなる。2人の投げ合いは、日本球界の未来を感じさせてくれた。
いや2人だけではない。大谷に続いてマウンドに上がったオリックスの金子は「大谷の後では直球が投げにくい」と、逆にすべて変化球でセ・リーグの強打者を翻弄した。個性際立つ投球術には快速球とは別の味わいがある。
野球、面白いぞ。
そう思わせてくれるオールスターゲームだった。
≪力と力の勝負 ファン魅了≫
阪神を最後に引退した金本知憲(かねもと・ともあき)さんから「まっすぐが来ると分かっていて空振りしたのは、クルーンだけ」と聞いたことがある。
巨人の阿部は、そのクルーンの球をミットで受けていた。オールスターの打席で大谷の162キロを体感し、「むっちゃ速かった。クルーンより大谷君の方が制球がいいし、ボールの質も全然上だよ」と話した。
先頭打者の鳥谷は「162キロの打席にはなかなか立てないと思うので、いい思い出になりました」と話した。昨季60本塁打のバレンティン(ヤクルト)は「ハヤイネエ」。そして4番のマートン(阪神)はこう話した。
「もし彼がメジャーでプレーするようになれば、そのときは子供たちを球場に連れて行って、『パパは彼と日本で対戦したことがあるんだよ』って言えるかな」
賛辞のオンパレードだが、もっとすごいのは、鳥谷が160キロを左前に、バレンティンも160キロを中前に、マートンは157キロを右翼線に、いずれも芯で速球をとらえて打ち返していることだ。
オリックスのぺーニャも、藤浪の153キロ速球をフルスイングで完璧にとらえ、左翼席に超特大の3ラン本塁打をたたき込んだ。マウンドで藤浪が苦笑いを浮かべるほどの、すさまじい当たりだった。
力と力の好勝負の連続は、オールスターならではのものだったかもしれない。ただ彼らには、人を興奮させる力と技量と魅力がある。シーズンでも、もっともっとファンを楽しませてほしい。
米メジャーリーグでは、2011年にレッズのチャプマンが球場表示で記録した106マイル(170.6キロ)が最速とされる。
ノーラン・ライアンは1974年、「ドプラー・レーザー・レーダー」の計測で、108.1マイル(174キロ)を記録した。
球速は測定時の条件でばらつきがあり、日米の記録とも公式のものではない。(EX編集部/撮影:安部光翁、山田喜貴、荒木孝雄、共同/SANKEI EXPRESS)