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科学
認知症を遠ざける身近な方法 大和田潔
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7月20日に「NHKスペシャル “認知症800万人”時代 『認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~』」が放映されました。これまで脳梗塞治療薬として使われていた薬剤や糖尿病治療薬のインスリンが、認知症の進行を抑える効果を持つことが示されていました。
インスリンは、肥満を促進させる悪玉ホルモンであるかのような誤った情報も流布されています。拙書『炭水化物の新常識』(永岡書店)では、インスリンは生き生きと細胞を保つために必須のホルモンであることに触れました。「3型糖尿病とアルツハイマー病」というSANKEI EXPRESSのコラムも昨年(2013年)お書きしました(2013年7月8日付)。膵臓(すいぞう)の病気でインスリンが全く作れなくなってしまったものを1型糖尿病、肥満などでインスリンの作用が相対的不足になってしまったものを2型糖尿病と呼びます。
アルツハイマー型認知症の脳内で、糖の代謝が悪化している状態は「3型糖尿病」とも呼ばれています。においをかぐための嗅(きゅう)神経は、脳内の神経線維(せんい)が直接伸びてきたものです。皮下注射ではなく、鼻の中にインスリンを噴霧することで、嗅神経を介してインスリンを脳内に直接届けることができます。インスリンによって脳の「3型糖尿病」が改善されると、認知症も改善したのです。
運動が認知症に良い影響を与えるという日本の疫学調査も紹介されていました。「春には脳に効く運動を」(2014年4月21日付)のコラムの中で、朝田隆筑波大学教授が率いる研究者グループが、運動による認知症予防の大規模研究について触れました。運動は、メタボリックシンドロームを改善し、糖尿病に良い働きかけをします。さらに、運動そのものが脳を活性化して認知症を予防するとも言われています。
糖尿病などのメタボリックシンドロームだけでなく、喫煙もリスクとなります。魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸の認知症予防効果の可能性が示唆されています。アルツハイマー型認知症の予防には、高価な食品やサプリメントなどは必要ありません。たばこを控え、過食に気をつけ、魚を食べて、運動する。こういった健康的な生活を送ることが、認知症予防につながるのです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)