SankeiBiz for mobile

早めに治すべき糖尿病 大和田潔

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

早めに治すべき糖尿病 大和田潔

更新

 【青信号で今週も】

 クリニックにも取材にいらしたことのある森永卓郎さん(57)が、「『糖尿病』の恐怖…悔しがる森永卓郎さん 合併症で多大な医療費負担」(産経デジタル2013年7月24日付)で、興味深いお話をされています。「足にできた傷がなかなか治らなかった。病院を受診すると、糖尿病と診断」され、「自分が糖尿病になるなんて考えたこともなかった」とのこと。また、人々に倹約生活を勧めながらも「医療費は毎月の固定費で節約できない。もっと早く病気の怖さや経済的負担が大きいことに気づけばよかった」と述べている、という記事です。

 この記載には、サイレントキラーである糖尿病の恐ろしさと、現実が凝縮されています。糖尿病は発症時にはほとんど無症状です。人間は、痛みやつらさがあると、それを何とかしようと治療に進みます。それに対して、症状がない場合は、放置しがちです。

 職場の健康診断で「血糖値が高めで、糖尿病になりかかっているので注意しましょう」と言われた方も多いでしょう。実際そういった人の中で、食事に気を付け、運動を習慣づけられる人はごくわずかです。人間は、不都合なものは見たくなかったり、先延ばししたりする傾向を持っています。

 しばらくすると、「そろそろお薬が必要な状態ですね」と言われて内服が始まります。薬を毎日飲まなくてはならないのは、つらいものです。でも、それをチャンスとして捉(とら)えられるかどうかで、その後が決まります。食事の管理と運動で、薬剤から離脱できる可能性が残されているからです。ところが、ある程度病状が進んでしまうと、薬剤からの離脱が難しくなります。

 時期を逸すると、一生懸命に気を付けても糖尿病がどんどん進行し、急速に腎臓の機能が悪化してしまうことがあります。また、脳や心臓、足の血管の病変が進んで、脳梗塞、心筋梗塞、足の壊疽(えそ)などを合併しやすくなります。血糖値はインスリンでコントロールできるかもしれませんが、合併症を十分に予防できる医療はまだ実現できていません。

 糖尿病はアルツハイマー型認知症の強力なリスクファクターです。健康寿命を延ばすためには、糖尿病だけは早めに解決すべき問題です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

ランキング