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アマゾンvs米作家…泥仕合の様相 「利益になる」「作家も出版社も減収必至」
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米著名作家ら900人以上が連名で8月10日付の米紙ニューヨーク・タイムズに全面広告を出し、米ネット通販最大手アマゾン・コムが電子書籍の価格設定をめぐって米出版大手アシェット・ブック・グループに圧力をかけていると批判した。
さらに作家たちは読者に、アマゾンの最高経営責任者(CEO)、ジェフ・ベゾス氏(50)に意見メールを出して「変心」を促すよう呼びかけた。
一方、アマゾン側も前日に声明を出し、利用者にアシェットのマイケル・ピーチCEOにメールを送って電子書籍の価格を下げるよう訴えてほしいと呼びかけており、争いは仁義なき泥仕合の様相を呈している。
広告を出したのは、日本でも人気が高いスティーブン・キング氏(66)やジョン・グリシャム氏(55)、ポール・オースター氏(67)ら906人。
アマゾンはアシェットとの年初来の交渉で、現在15ドル(約1530円)以上で販売している新刊の電子書籍を、「印刷や流通、返品の費用がかからない」「今や電子書籍の競合は電子書籍以外のゲームや映画などのコンテンツであり、これらに対抗するためにも販売価格を安くすべきだ」などとして10ドル程度に下げるよう要求。アシェットがこれを拒否している。
広告は、アマゾンがアシェットに契約更新の条件をのませる目的で、アシェットが出版する書籍を意図的に予約できなくしたり、配達を遅らせたりするなどして差別的に圧力をかけているとした上で「これ以上作家を傷つけることなく、また顧客の書籍購入を阻むことなくアシェットとの紛争を解決するよう求める」と訴えた。
さらにベゾスCEOのメールアドレスを付記して、読者にメール送付を促した。現在、アマゾンではアシェットの多くの書籍が「現在入手不可能」あるいは「発送まで2~3週間」になっており、アマゾン側は「契約更新の条件交渉が折り合わず、アシェットの書籍の在庫を持たないため、出荷が不可能だったり、時間がかかる」と理由を説明している。
アマゾンは8月9日、サイトに声明を出し、紛争の経緯を説明した上で、「アシェットが電子書籍の価格引き下げに応じれば、消費者にとってメリットになるだけではなく、作家とアシェットにとっても(たくさん売れて)利益になる」と主張。アシェットのピーチCEOのメールアドレスを提示し、読者や作家にメール送付を訴えた。
アシェットのソフィア・コトレル上級副社長は「著者の書籍と、それを編集・配本・販売する私たちの仕事の価値を守る決意だ。この困難な状況が長引かないことを望むが、アマゾンの要求をのめば、作家も出版社も減収となるのは必至だ」と主張している。
アマゾンは以前、米出版大手マクミランとの間でも同様の争いを起こし、この時は結局、要求を取り下げている。
米5大出版社であるハーパーコリンズ、マクミラン、ペンギン・ランダムハウス、アシェット、サイモン&シュースターの中で、アシェットの力が一番弱いという事情から、アマゾンが狙いを定めて弱い者いじめをしているとの見方も業界ではある。
また、米電子書籍市場で圧倒的シェアを持つアマゾンの影響力が大きくなりすぎたという市場の問題点も垣間見えてくる。(SANKEI EXPRESS)