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なぜ盗む 米病院の患者情報 中国ハッカー集団の攻撃相次ぐ
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米国最大級の病院グループ、コミュニティー・ヘルス・システムズ(CHS)は8月18日、中国からサイバー攻撃を受け、約450万人分の患者の個人情報が盗まれたと公表した。米国ではこの半年間に、医療機関に対する攻撃が相次いでいるという。攻撃を仕掛けたハッカー集団は、これまで米国の防衛、宇宙航空、ITといった企業を標的に産業スパイ活動を行ってきたとされ、中国政府当局の関与も疑われている。ただ、今回盗まれた患者の情報はとても中国当局が欲しがるとは思えないものばかり。米国の専門家らは警戒を強めながらも、謎のサイバー攻撃の意図をいぶかっている。
情報流出は、上場企業であるCHSが米証券取引委員会に提出した資料で公表された。ロイター通信などによると、米サイバーセキュリティー企業、マンディアントが調査を行った。この会社は、中国人民解放軍のサイバー部隊の存在を突き止めたことで知られる。
「彼らは、気づかれることなく、何度でも長時間にわたってサーバーに侵入できる相当高度な技術を有している」
調査責任者のチャールズ・カーマカル氏は、ロイター通信にこう語った。
攻撃を仕掛けたのは、「APT18」と呼ばれる中国のハッカー集団。CHSが運営する全米29州の206病院で過去5年間に医療サービスを受けた患者約450万人の住所や氏名、生年月日、電話番号、社会保障番号が盗まれた。
ただ、病名や治療に関する情報、クレジットカード番号は流出しておらず、医療機器開発に関するデータも無事だったという。
APT18はこれまで、ハイテク企業のほか、金融や建設、ヘルスケア関連の企業が持つ特許技術など知的財産に関する情報を標的にしてきた。APT18を監視してきた別の米サイバーセキュリティー企業、クラウドストライクは、ロイター通信に「彼らの背後には北京の政府関係筋がいるか、あるいは政府機関から直接指示を受け攻撃を展開している可能性がある」との見方を示した。
ただ、今回盗まれた患者の個人情報はこれまでの標的とは大きく異なり、その意図は謎だ。マンディアントのカーマカル氏も「過去4年間、この集団を監視してきたが、こうした情報を盗んだ前例はない」と、驚きを隠さない。
米国ではこの半年間に医療機関へのサイバー攻撃が相次いでおり、6月にはモンタナ州保健衛生局のサーバーから約100万人の個人情報が盗まれた。今回の被害はそれを大きく上回り、米保健福祉省が医療機関に対するサイバー攻撃の追跡調査を始めた2009年以来で最悪の規模となった。
マンディアントでは中国の計20のハッカー集団を対象に、医療機関へのサイバー攻撃の監視を強化しているという。
なぜ医療機関を標的とし、患者の情報を盗み出したのか。犯罪者集団なら詐欺や銀行口座の開設などに利用できるが、中国当局の関与も疑われるハッカー集団にしてはせこすぎる。
「彼らは手当たり次第に情報を盗み出そうとして、たまたまCHSの患者情報を吸い上げたのかもしれない」。中国によるハッキングの米専門家はこんな見方を示す。
中国が米国に対し無差別サイバー攻撃を開始した可能性も否定できない。(SANKEI EXPRESS)