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【広島土砂崩れ】「72時間」過ぎても諦めない 死者40人、不明47人に

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【広島土砂崩れ】「72時間」過ぎても諦めない 死者40人、不明47人に

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断続的に雨が降る中、陸自の隊員らは懸命に行方不明者の捜索を続けた=2014年8月22日、広島県広島市安佐南区(三尾郁恵撮影)  広島市の大規模土砂災害は発生から3日目の8月22日、死者が40人、行方不明者は47人となった。不明者の生存率が急激に低下するとされる「72時間の壁」が23日未明に迫るなか、断続的に強い雨が降り、二次災害の恐れから住民には避難指示が出され、自衛隊や警察、消防の捜索活動も一時中断を余儀なくされた。「72時間は単なる目安にすぎない」。家族らが「何とか無事でいて」と祈るなか、懸命の救助作業が続けられた。

 懸命の捜索続く

 広島市内は22日朝から再び雷雨に見舞われ、午前5時には大雨警報が発令された。市は安佐南区(あさみなみく)と安佐北区(あさきたく)の一部に新たな避難指示を出した。

 捜索活動も21日夜に降雨のため中断された。22日午前に雨の間隙を突いて再開されたが、午後には「地盤が緩み山が変形している」などの通報があり、二次災害の危険が出てきたため、再び中断された。

 市災害対策本部によると、安佐南区八木地区で2人が発見されたが、うち1人は女性で心肺停止の状態だった。別の1人は生死不明という。

 「早く再開したい。担当の現場は不明者が18人と聞いている。状況がもどかしい」。午前中に待機していた自衛隊員(41)は焦りをにじませていた。その後、再開の指示が出ると、スコップを持った救助隊員らが表情を引き締めて現場に向かった。

 「友人がまだ…」

 被害が甚大だった安佐南区の八木地区。県営住宅は2階部分が土砂で削り取られ、1階だけが残されていた。重機が入れず、自衛隊や消防が隊列を組んで現場に進み、手作業で土砂を運び出す。近くでは、雨具も着ずにずぶぬれになりながら呆然(ぼうぜん)と崩れた家を眺める男性の姿。脇に立っていた女性が寄り添い肩を抱えていた。

 緑井地区では消防隊員ら50人ほどがスコップで泥をかき出し、バケツリレーで搬出していた。「友人がまだ見つかっていない」。自宅の様子を見に来た女性(81)は傘を差しながら涙ながらに語った。

 脱水症状と低体温

 人が水分を取らずに生存できる限界が3日間とされ、災害発生から72時間以上がたつと生存率が著しく低下する統計データもあり、生死を分ける「壁」といわれる。

 阪神大震災では建物の倒壊現場から救出された被災者の生存率は発生当日が80.5%、3日目が21.8%だが、4日目になると5.9%にまで低下した。

 東日本大震災で災害医療コーディネーターを務めた東北大病院の石井正教授は、その要因として脱水症状と低体温症を挙げる。だが一方で、「72時間はあくまで目安で、現場でそうした時間が意識されることはほとんどない。チャンスがゼロにならない限り救助活動は続けられる」と指摘した。

 神戸大病院救急部の西山隆教授も「経験上言われていることで、科学的に証明されていない。環境や状況によっては生存は可能だ」と話す。

 実際、東日本大震災では宮城県石巻市で、80歳女性と16歳男性が217時間後に救出され、2008年の中国・四川大地震では生き埋めの男性が100時間後に生還したこともある。

 「必ず見つけ出す」。「無事を信じる」。捜索活動は夜通しで続けられた。(SANKEI EXPRESS

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