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夢を追い続ける100歳スイマー 萩原智子

 今月(8月)21日から4日間に渡りオーストラリアのゴールドコーストで行われた水泳のパンパシフィック選手権で日本を盛り上げた代表選手。それに負けず劣らず熱いのが、日本のマスターズスイマーだ。先月(7月)18日から21日まで横浜国際プールで、18歳以上から出場でき、年代ごとに競う「ジャパンマスターズ2014」が開催された。

 私も会場に視察へ出かけたが、想像以上の熱気に圧倒された。参加選手は年々、増え続け、今年は全国から5835人が出場。マスターズ世界記録が7個、日本記録は33個も樹立され、大会は大いに盛り上がった。

 途中でやめる勇気

 大会で特に注目を集めたスイマーがいた。100歳の長岡三重子さんだ。長岡さんは80歳の時に膝を痛め、リハビリで水泳を始めた。90歳代に入ってから徐々に本領を発揮。自己記録を次々と塗り替えていった。「100歳で1500メートル完泳」という目標に6月のレースでチャレンジし、見事に世界初という快挙を成し遂げた。

 その1カ月後の今大会では、100歳区分の選手として登録。50メートル背泳ぎで、世界記録を15秒以上更新する1分33秒89で泳ぎ切り、「天にも昇る気持ち」と笑顔でレースを振り返った。

 笑顔の裏にあるすごいところは、自分を制御する術を持っていることだ。1500メートル完泳を6月に達成した長岡さんだが、1回目で成功したわけではない。過去にチャレンジした際には、500メートルでギブアップした。目標にチャレンジをしていると、ついつい無理をしがちだが、自分の体と相談し、途中でやめる勇気を兼ね備えている。だからこそ、年齢を重ねても、目標に向かってチャレンジを続けられる。「長岡さんは、私の憧れです」「あんな風に年を重ねていきたい」「長岡さんはスーパーマンです」「休む勇気を持っている方で、尊敬する」

 周りのスイマーたちは口々にこう言う。周りに大きなエネルギーを与える100歳。座右の銘は「為せば成る」。現在保有している世界記録は23個。週3回はプールへ通い、練習を積む毎日だ。

 夢を語ってほしい

 夢や目標を持ち、有言実行を続けている長岡さん。多くの人が年を重ねていくにつれ、夢や目標を持ったり、語ったりすることをやめてしまう。私は、「夢先生」として夢を持つことの大切さを教える授業のため小学校に出向くことがあるが、まだ無邪気な子供たちでさえも、夢や目標を発表してくれない。勇気を持って発表してくれる児童は少ないのが現状だ。

 私は「どんどん人前で自分自身の思いを語ってほしい…」と授業で伝えてきた。夢や目標を口にすることは勇気がいるが、言葉にすることによって周りも良い意味で巻き込むことができる。夢や目標を聞いた周囲は、その夢や目標に向かっていく本人のサポーターとなり、支え応援してくれるようになる。

 私も小学6年の時、「五輪に出場したい」と夢を発表した。それから家族や友人、指導者が全力で応援してくれるようになった。一人では乗り越えられない壁も、沢山の人たちが背中を押してくれることで乗り越えることができた。

 大切なのは「健康寿命」

 2013年の日本人の平均寿命は男性が80.21歳、女性は86.61歳で、前年に比べて男性は0.27歳、女性は0.20歳延びた。「寿命」がさらに延びたと話題になっているが、私は「健康寿命」が延びていくことが未来の日本にとって大切なことだと思う。

 健康で楽しく、何歳になっても、スポーツでも趣味でも、夢や目標を追いかけ続けることが生きがいとなり、生活に張りが出てくる。夢や目標が生きるエネルギーになるのだ。

 長岡さんのように夢や目標を持ち発信し、時には立ち止まりながらも前に進むことが人生を豊かにする。100歳スイマーが、人生を充実させる術を教えてくれた気がする。(日本水連理事、キャスター 萩原智子/SANKEI EXPRESS

 ■はぎわら・ともこ 1980年4月13日、山梨県生まれ。身長178センチの大型スイマーとして、2000年シドニー五輪女子200メートル背泳ぎ4位、女子200メートル個人メドレーで8位入賞。02年の日本選手権で史上初の4冠達成。04年にいったん現役引退し、09年に復帰。子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)の手術を乗り越え、現在は講演・水泳教室やキャスターなどの仕事をこなす。

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