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長回しは観客に喪失感を味わってもらうための演出 李康生 映画「郊遊〈ピクニック〉」

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長回しは観客に喪失感を味わってもらうための演出 李康生 映画「郊遊〈ピクニック〉」

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俳優、李康生(リー・カンション)さん=2014年6月19日(高橋天地撮影)  台湾映画の第一人者、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督(56)が、台北郊外の廃虚でホームレス同然の生活を続けている父親と幼い息子と娘の日常を通して、台湾社会の暗部を浮き彫りにした。原題は中国語でピクニックを意味する「郊遊」(邦題『郊遊〈ピクニック〉』)。行き当たりばったりで、何が起こるかも分からない、不安定な暮らしを逆手に取って、むしろ父親と子供たちがドキドキの日々を楽しんでいる様を表現したという。

 主人公の父親、小康(シャオカン)には長年コンビを組んできた名優、李康生(リー・カンション)(45)を据えた。小康は高速道路の高架下で不動産広告の看板を持って立ち続けることで日銭を稼ぎ、子供たちは通学せずスーパーの試食コーナーを徘徊(はいかい)して空腹を満たす日々だ。

 蔡監督は気が遠くなるほど静かな長回しの映像を駆使した。李は「壁画を15分近くひたすら見つめている場面があります。僕が何か行動を起こさなければ、監督はいつまでもカメラを回し続けたでしょう。だから頃合いを見て動きを加え、ひと区切りをつけました」と語り、長回しの意図に関しては観客にじっくりと喪失感を味わってもらうための演出と説明した。

 本作は昨年のベネチア国際映画祭で審査員大賞に輝いた。蔡監督は現地会場で引退を表明しファンを驚かせたが、「師匠」をよく知る李の見方は楽観的だ。「体を壊しただけ。よくなればすぐに戻ってきますよ」。9月6日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムなどで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

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