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【逍遥の児】ステンドグラスは光の中で精彩を放つ
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ステンドグラス。光の中で精彩を放つ。千葉県市川市に工房があるという。取材したい。暑い日。午前10時。わたしはJR本八幡駅で下車した。携帯電話で連絡する。
「分かりました。駅前広場で待っていてください。車で迎えに行きます」
10分後。車が駅前広場にやってきた。眼鏡。ひげをはやした穏やかそうな男性がハンドルを握っている。アトリエ「ミュージデ」代表、高井啓司さん(60)だ。
工房に到着。さっそく話をうかがった。高井さんは秋田県能代市(のしろし)出身。中学生のとき、キリスト教会で開かれる英語教室に通った。
「教会で初めてステンドグラスを見たんです。赤と黄の色ガラスをはめこんだ素朴なものでした。生活空間とは違う異空間で体験したものだから、深く印象に残りました」
絵が好きだった。武蔵野美術大学に進学した。卒業が迫ってくる。なにか、仕事を見つけなくては。そんな軽いノリで東京都内の工房に就職した。偶然、ステンドグラスを扱っていた。上司に命ぜられるまま、デザインし、制作。独特の技法を習得していった。
転機は33歳。意を決し、単身、イタリアに渡った。ミラノ郊外。小さな村の工房。2階に泊まり込み、制作に熱中した。
「イタリア語はほとんど話せません。でも、やることは一緒ですから、仕事はできた。工房長にならないかとの誘いもあったけど、永住する気はありませんでした」
長期休暇をとった。中古車を買い、欧州の教会を巡った。ステンドグラスの歴史、奥深さを体得していく。
「ステンドグラスは人々が大切に守ってくれる。未来永劫(えいごう)、残る。この仕事に誇りを持ちました」
満を持して帰国。独立を果たした。遠藤周作文学館(長崎市)や全国の教会、銀座のバー、湯河原のフランス料理店などを手掛け、評価は高い。
――ところで、工房名の「ミュージデ」って、一風変わっていますが
「友人のトルコ人女性の名前を拝借しました。吉報という意味です。ちょっといい響きでしょう」(塩塚保/SANKEI EXPRESS)