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経済
地域材で「木の家」 森を元気に 林野庁の木材利用ポイント事業 申請11万件達成
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「申請件数は順調に伸びており、地域材の需要喚起につながっている」と話す、林野庁林政部木材利用課長の吉田誠さん=2014年9月3日(ニュースペース・コム撮影) 林野庁の「木材利用ポイント事業」が昨年(2013年)7月1日の受け付け開始から今年9月5日までに申請総数で11万件に達した。事業期間は9月末までだが、ポイント申請受け付けは来年5月末まで可能で、件数はさらに大幅に増える見通し(ただしポイント発行額が予算額に達した場合はその時点で受け付け終了となる)。林野庁では、期限ぎりぎりまで木造住宅や内装・外装の木質化、木材製品などの購入促進をはかるとともに、地域材の利用を増やすことが「森林の整備・保全だけでなく、地球温暖化防止や農山漁村の振興にも大きく貢献する」ことを広く呼びかけていく。
木材利用ポイント事業は、木造住宅の新築や増築、購入などのさいに、スギ、ヒノキといった地域材の種類、その利用量など一定の条件を満たした場合にポイントを交付するもの。ポイントは地域の農林水産品、農山漁村地域における体験型旅行、商品券などと交換することができる。各種エコポイントの「木材版」と考えればいい。木造住宅のほか、マンションなどの内装や外装の木質化工事、家具などの木材製品、木質ペレットストーブ・薪ストーブの購入も交付対象となる(イラスト参照)。
当初は昨年(2013年)4月1日以降の工事着手分から1年間が対象期間だったが、地域材の種類を一部外国材に拡大し、期間も今年9月30日まで延長された。ポイント申請は来年5月末まで。総予算は560億円。林野庁の木材利用課によると、昨年(2013年)7月1日からの申請件数は木造住宅と内装・外装の木質化工事で計10万3000件、木材製品と薪ストーブなどの購入で8000件にのぼった(今年9月5日現在)。
木材利用課の吉田誠課長は「申請件数は順調に伸びており、来年5月の申請受け付け終了時点では、ほぼ予算額を消化する件数に達する見通しです。ポイント付与に対する関心は高く、住宅メーカーなどが交付対象になる木造住宅を商品化してセールスに力を入れたことなどもあって、当初の目的である地域材の需要喚起につなげることができたと考えています」と語る。
ポイント事業は(2014年)9月末(※)で終了するが、林野庁では引き続き、「木材がいかに心地よい湿度を保ち、暖かくて、リフレッシュ効果や鎮静効果などが情緒の安定にもつながるといった木の良さ」をアピールするとともに、木材利用の拡大が「山村の活性化につながって森を元気にし、それがCO2吸収能力の向上によって地球温暖化防止などにも貢献する」という認識を深めてもらう広報活動に力を入れる。
※(2014年)9月30日までの住宅工事着手分、製品購入分がポイント付与の対象となる
≪森林資源増加 木材自給率は28%に≫
日本は世界有数の森林国だ。国土面積に占める森林面積の割合は68.5%でフィンランド、スウェーデンについで3位。しかも、日本の森林資源量は毎年1億立方メートルも増大を続けており、平成24年の全資源量は49億立方メートル。人工林の面積は40%を占め、戦後の昭和20年代以降に植林されたスギやヒノキなどが利用可能な50年生以上になり資源量の増大につながっている。
一方で、木材消費量は7000立方メートル程度にとどまり、しかも国産材の利用量は低い。近年、木材自給率は20%を割っていたが、ようやく回復しつつあり、平成25年度で28.6%となっている(いずれも林野庁資料から)。
森林資源が増大しているのに木材利用が進まないと、間伐などの森林の手入れが十分に行われず、混み合ったままだとせっかく育った木も弱々しく、土壌も失われて土砂災害の原因にもなる、CO2吸収能力も落ちるといった悪循環に陥ってしまう。国産材で伐採されても使われずに捨てられているものが半分も占めるという。
消費量が伸びない理由は、日本の住宅が洋室化するなどして床柱など従来の国産材の用途が変わってしまったといった事情もあるが、外国産材に比べ安定的に供給するための体制整備がまだ不十分ということもある。
「木の伐採は環境に悪い」という誤解もあるが、林野庁は「人工林の場合は、適切に伐採して植林し、間伐して育てるというサイクルが非常に重要です。これが森を元気にし、環境に役立つことにもつながる。また、木材は鉄やアルミといった素材に比べ製造時の炭素排出量が大変少ない省エネ材料でもあるのです」と強調する。
木材利用では、「心と体の健康にいい影響を与える」ということから学校やスポーツ施設など公共施設の木造建築が増え、耐火木造の大型商業施設、中高層建築の木造化、木質バイオマス発電施設なども広がっている。林野庁では、木材利用を促進する「木づかい運動」を「森づくり」につなげるサイクルの実現をはかろうとしている。木材利用課では「木の良さとともに、食品と同じように木材製品の産地や林業についても関心を持ってほしい」と話している。(ニュースペース・コム編集部、写真も/SANKEI EXPRESS)